七百五十話 捕食チャンス?
赤髪マッシュの襲来が過ぎ去り、昼食も終わり……その後も度々女性陣だけが盛り上がる場面はあれど、夕食を終えるまで比較的楽しい時間を過ごすことが出来た。
「ねぇ、アラッド。ラディアさんがこっちに来る機会があったら、一緒にパーティーを組んであげたら?」
「……それは構わないが、多分俺と組んでところで、多少の面倒事は消えないと思うぞ」
「ラディアさんからすれば、その多少まで減るだけでも嬉しいでしょ。それに、その頃にはアラッドも今より有名になって、喧嘩を売ってくる人もいなくなるんじゃない?」
ラディアがアルバース王国に興味が持っているのは間違いなく、いつかアルバース王国に訪れてもおかしくない。
しかし、それが半年後なのか、それとも一年後なのか数年後なのかは分からない。
ただ……アラッドの冒険者人生を考えれば、それだけの期間があれば、今よりも有名なっているのは、ガルーレの中で確定していた。
「……かもしれないな」
「僕としては、現時点でラディアさんに無茶な絡み方をするのですら、命知らずと言うか……結果が見えてると思うんだけどね」
「それが解らないから、昼間の……赤髪マッシュ君たちは絡んできたんじゃない?」
「うん……そうだね。けど、彼らは意外と物分かり良かったよね」
「だよね~~。確かにラディアさんとパーティーを組むには、ちょっと足りない部分がありそうだけど……ふふ、あの四人なら、誰を食べても良いかな~~」
「行ってくるのか?」
「……今日はちょっと遅いから、明日の運次第だね」
ガルーレは、非常に貞操観念が緩い。
それはアマゾネスという種族全体に言えることだが、実のところ……ガルーレはアラッドたちと共に行動を始めてからも、アリだと思った男と合意に至れば、サクッと致していた。
そんな性欲モリモリなガルーレから見て、赤髪マッシュたちは是非とも食べてみたい男だった。
「それで、明日は訓練だっけ?」
「あいつらとの試合なぁ……アッシュ、お前どうする?」
明後日には出発する。
一日は王都の観光に使い、二日目は王城にある訓練場を借りて存分に訓練、試合をすることにした。
「…………アラッド兄さんは、どうするべきだと思う?」
「最終的に決めるのはお前だが、俺は参加した方が有意義だと思うぞ。アッシュ、お前が目指す場所は変わらないだろうけど……なんとなくだが、戦いからは避けられない気がする」
「呪いみたいな、もの?」
「そんな大げさなものじゃない。ただ、俺がそう感じただけだ」
そういった星の元に生まれたのかもしれない……とまでは口にしなかった。
(多分、そんな星の元に生まれたのは、間違いなく俺だ。その俺から、お前はその可能性が高いって言われたら……不安にはならずとも、気分が沈むだろうな)
双子であるシルフィーであれば「寧ろ望むところよ!!!!」と、意気揚々と迎え入れる。
しかし、アッシュにとって……錬金術の道を進むのに必要だと感じる闘争以外は、基本的に邪魔である。
「……分かった、参加するよ。でも、アラッド兄さん。僕、奥の手を使わなかったら、多分ついて行けないと思うよ」
「そうか? それなら、それも一つの経験として受け止めるんだな」
兄と似て、弟も謙遜だなと思い……スティームはふっと笑みを零す。
(兄弟、だな~~~~…………でも、兄弟ならアッシュ君はアッシュ君で……割と強めの狂気というか、殺意を秘めてたりするのかな?)
見られるなら、是非見てみたいと思うも、それはそれで良くない状況なのではと…………嫌な状況が浮かんでしまい、そっと胸の内にしまった。
「あら、遅いじゃない」
「……お前らが早いんだよ」
翌朝、アラッドは朝食時間を過ぎても寝ていた……わけではなく、しっかり朝食前には目を覚ましていた。
だが、食堂に降りると、既にリエラたち三人が集まっていた。
「悪いが、朝食はゆっくり食べさせてくれよ。ここの飯美味いんだから」
「安心して。私たちもまだ朝食食べてないから」
なんで食べる前に来たんだよ、とツッコミたいアラッドだったが、小さくため息を吐くだけで済ませ、適当に注文。
「そういえば、アッシュは訓練に参加するのか?」
ライホルトは先日の会話内容をしっかりと覚えており、非凡な才を持てど、アッシュが戦闘に関して大して興味がないことを覚えていた。
「はい。一応、参加しようと思います」
「っ、あらあら。珍しい、と言って良いのかしら? 私としては、嬉しい限りだけど」
リエラとしても、てっきりアッシュは見学すると思っていたので、嬉しい報告だった。
「何か、心変わりでもあった?」
「そういったものはないですけど……昨日の夜、アラッド兄さんから僕の人生に……戦いは付いて回ってくると言われたので」
「なる、ほど………………うん、アラッドの言いたい事は、なんとなく解るかな」
アッシュの顔をじっくり見た後、ラディアはアラッドの意見に同意。
何となくではあるが、自分と同じ匂いを持っていると感じた。
それはアッシュにとって……間違いなく、死刑宣告だった。
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