七百四十九話 巡り合えるか
「……彼等は、ラディアに異性として好意を持っていた、という事で良いのか?」
「多分、そうだろうな」
「アラッドの言う通り、そっちでもモテモテのようね、ラディア」
「リエラまでからかわないで」
赤髪のマッシュたちが退室したことで、また楽しい昼食が再開。
ただ、ラディアだけは変わらず申し訳なさそうな顔をしていた。
「しかし、実際のところパーティーを組むメリットは……本当にラディアにとって、五割以上はないのか?」
「ひとまず、ラディア嬢以外のメンバーが男だけというのは論外として……せめて、パーティー単位でAランクモンスターと互角に戦える力が必要でしょう」
「彼等じゃ、まずそれは無理と」
「……そうですね。瞬殺されるとは言いませんが、出来る事は時間稼ぎぐらいか」
これまで戦ってきたドラゴンゾンビ、成体の雷獣、轟炎竜の力を思い出し、冷静に赤髪マッシュたちが出来ることをイメージした結果……やはり彼らが善戦出来る光景は思い浮かばなかった。
「ラディア嬢は、冒険者としての人生に、何を求めている」
「ん~~~……冒険者として生きてる瞬間を感じたい、かな」
「なるほど。であれば、やはり並みの……年齢を考えれば並ではない冒険者であっても、いずれは自尊心に傷が付き、パーティーは解散するかもしれませんね」
「アラッド、それはどういう事かな」
「簡単な事だ、スティーム。ラディア嬢が求めてるのは、冒険者として生きてる瞬間を感じる……つまり、冒険者としての刺激を求めてる」
スティーム、ついでにガルーレも冒険者としての刺激について考え……似た様な考えに至った。
「パーティーとして戦果、功績を上げても、最終的に注目されるのはラディアさんになるという事だね」
「そういう事だ。注目されるのに、男女の差は関係無い。功績を上げる中で誰が何を行い、どんな難敵を倒せたのか……力だけが全てとは言はないが、やはりカギとなるのは純粋な戦闘力だ」
「…………ちょっと思ったんだけどさ、難敵が相手なら誰が止めを刺したとか、そういうのが注目されそうじゃない?」
「そう考える人もいるだろうな。でも、大半の人は誰が主軸だったのかに眼が行くと思う」
アラッドの言葉を聞いて、ガルーレはこれまで耳にして来た同業者たちの武勇伝を思い出す。
(ん~~~~~、アラッドの言う通り、かも?)
丸々その通りだとは思わないが、印象に残るのはどちらかと尋ねられれば、確かに主軸の人間だった。
「そうなると、やっぱり注目されるのはラディア嬢になる」
「……アラッド。確かにお前の考えは解るが、先程声を掛けてきた彼らは、冒険者らしからぬ冷静さを持ち合わせていた。あぁいった者がメンバーであれば、そういった事態にはならないのではないか?」
「ふむ…………既に精神が成熟してる、もしくは良い意味でドライな考え方が出来る者たちであれば、上手くいく
可能性はあるか……そうだな。さすがに決めつけるのは早過ぎたか。ただ……そういった者たちと、ラディア嬢が巡り合えるか、だな」
運良く、互いの存在が重荷にならず、男女のバランスが丁度取れており、ラディアの冒険者としての実力に後れを取っていない。
そんな者たちと巡り合えるのか。
リエラとライホルトは、一度自分たちの同世代を思い出すが…………難しい表情を浮かべたまま、黙ってしまった。
「ふふ、中々出会えることはないだろ」
「そうね……三年生の中でも、ラディアと互角に渡り合える同世代は……」
「騎士でも、同じだな…………」
全くと言って良いほど浮かんでこない。
ライホルトもラディアとアラッドの戦いは観ていた。
最後の最後、ゾンビ戦法の様な戦い方ではあったが、あれが最終的にラディアが至る強さだと思うと……この同僚なら、と思える者がおらず……自然と、視線はまだ学生であるアッシュに向かった。
「? どうしましたか、ライホルトさん」
「いや、すまない……君は、戦闘職には就かないのだったな」
「はい。とりあえず、その予定はないですね」
勿体ない、という話は済んでいるため、ライホルトはそれ以上あれこれ突っ込んで話さなかった。
「歳上の冒険者であれば、ラディア嬢の強さに付いて来れる者はいるだろうが……まだ固定のパーティーを組んでいない、もしくは自分のパーティーに入れても良いと思う先輩がいるかどうか」
「冒険者って、強いからといってサクッと組めないのね」
「人間同士で起こる問題のめんどくささは、俺達が良く解ってるでしょう」
「……そうだったわね。少し考えが浅い言葉だったわ」
関わる相手はよく考えて、よく視て選ばなければならない。
貴族であるリエラたちは、それが身に染みて解っている。
「とにかく、今ラディア嬢が無理して探す必要はないでしょう」
「ラディアが絶対に相手の腹の内を見抜けるとは限らないものね…………あっ、でも」
何かを思い付いたラディア。
彼女が思い付いた内容を聞いたアラッドたちは、その考えに対して……絶対に不可能、とは思わず、寧ろ良いアイデアだと思った。
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