六百四十三話 そういう関係ではない

「なるほど……それは盲点って感じね」


「そうだろ。おそらく、あのダンジョンに足りないピースだと思うんだ」


アラッドから伝えられた内容に、ガルーレは面白そうな笑みを浮かべながらも、伝えられた内容に対してかなり納得していた。


「そうね。半ダンジョン化した場所の特性? を考えると、確かに現状ではそこが足りないと言えなくもないわね」


「リバディス鉱山の大きさを考えると、妙に何かが足りないなと思ってな」


何が足りないのか……二人の話を聞いていたバーテンダーでさえ、アラッドが考え付いた内容に対して思わずなるほど! といった感情が顔に出た。


「でも、そう考えると…………やっぱりまた時間がって話になりそうね」


「それはそうかもしれないが、何年もという時間にはならないと思うぞ。半ダンジョン化の特性? を考えれば、数か月以内には現れるかもしれない」


「それじゃあ……とりあえず、後二か月ぐらいを目安に探索してみる?」


「そうだな。それだけ探しても発見出来なかったら、正直ギブアップだ」


この後、二人はまだまだ盛り上がりながら互いに五杯以上のカクテルを飲み干し、既に潰れているスティームを背負って宿へと戻った。


そしてそれから二十日後……アラッドは主に鉱石の採掘を楽しみながら過ごしていた。

半分とはいえ、それでもダンジョン化した鉱山。


探せばレアな鉱石が手に入る手に入る。

比較的強いモンスターが多く徘徊しているエリアであっても、クロたちが楽しく蹴散らしてくれるため、アラッドはモンスターの襲撃を気にせず集中して採掘が出来る。


「おほっ!!! ミスリルじゃねぇか!!!!」


こうしてレアどころか、スーパーレアな鉱石まで採掘することができ、キャバリオンといった独自のマジックアイテムを製作するアラッドとしては非常に楽しい日々が続いていた。


「ご満悦だね、アラッド」


休息時、まだ残っていた轟炎竜の焼肉を食べながら腹を満たしていた三人。


「まだ何かをイメージはないが、それでも高品質な素材はあって困ることはないからな」


「それもそうだね。それに、ミスリルなら……フローレンスさん専用のキャバリオンを造るのにピッタリの素材だもんね」


「うげっ…………まぁ、そりゃそうかもな」


「フローレンス? フローレンスって…………アラッドが大会の決勝戦で戦った、あのフローレンス・カルロスト?」


ガルーレの言葉に、二人そろって首を縦に動かした。


「…………………………えっ、二人ってもしかしてそういう関係だったの?」


頭をフル回転させた結果、そういう結論に至ったガルーレ。

しかし、その答えに対してアラッドは……猛烈に嫌そうな顔をしながらハッキリ違うと答えた。


「そういうもクソも関係無い間柄だ」


「えっ、じゃあなんで大会の決勝で戦った相手にキャバリオンを? もしかして普通に依頼されただけ?」


「別に依頼はされてないぞ」


「…………………………えっ、じゃあなんで?」


もう一度あまり良くない頭をフル回転させるが、それらしい答えが全く浮かばなかった。


「……あれだ、木竜が消えた一件は知ってるんだろ」


「もち、知ってるよ」


「それにな、アルバース王国じゃない連中が関わってたんだよ」


「…………い゛……ま、マジで?」


あまり頭は良くないが、察する能力は高いガルーレ。


「もしかしたら面倒な事態に発展するかもしれない。そうなると、フローレンスの奴も参加するだろうから……その時になれば、必要かもしれないと考えてるだけだ」


「はぁ……そんな事もあったのね」


「あまり言いふらさないでくれると助かる」


親しくなった人物ということもあってポロっと口にしてしまったが、あまりほいほい一般的な冒険者に伝えて良い内容ではない。


「ほいほい、任せといて。アラッドたちと敵対とか、ぜ~~~ったいに嫌だし」


「ふふ、そう言ってくれると嬉しいよ」


「にしても……やっぱり、アラッドは何だかんだでそのフローレンスさんの事を認めてるんだね」


「……それは、どういう事だ?」


気に入らない、という訳ではないが、何故ガルーレがそう思ったのかは気になるところ。


「だって、アラッドって多分だけど、普通の人って言うか……強くて常識が欠けてない人を嫌いになることはないでしょ」


あまり詳しくフローレンス・カルロストという人物を知らないガルーレだが、人格者ではあると勝手に思っており……それは決して間違えてはいなかった。


「でも、そのフローレンスさんの事について話すとき、かなり嫌そうな顔になるじゃん」


「だろうな」


「それって、フローレンスさんの事を認めてるのと一緒じゃない」


「…………………………他の奴らとは違う意識は持ってるかもな」


ちょっと良く解らないが、とりあえず珍しい感情を持つ相手ということは本人も自覚している。


「でしょでしょ。それってやっぱり珍しいな~~って思って」


「アラッドが嫌いながらも認めてる人って……確かにフローレンスさん以外はいないかもね」


「…………」


弟であるドラングは嫌ってはいないため、色々と否定出来なかったアラッドだった。

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