五百三十三話 どんな人?
野郎たちが野郎の会話で盛り上がっている中、エリナを中心とした女性陣たちも一か所に集まっていた。
本当はアラッドたちの会話を盗み聞きしたいところだが、もし……仮にその様な行為がバレたとなれば、おそらくアラッドはどうこうする事はないだろう……しかし、エリナたちが罪悪感で潰れてしまうかもしれない。
という事でアラッドたちの会話を盗み聞きこそしないが、エリナたちはエリナたちで一か所に集まり、神妙な顔をしながらあの一件について話し合っていた。
「アラッド様の初めてのお相手となった方……いったいどんな方なのでしょうか」
「はいはい!! やっぱり、強い人だと思う!!!!」
確信を持った表情で断言するレオナ。
まず大前提の条件として、強い人。
これには司会を務めるエリナも同意だった。
「そうですね。アラッド様は以前、惚れた相手であればあまり見た目は問わないと言っていましたが、やはりそれは
戦闘力的な強さを持っている方……もしくはとても強い芯を持ってる方というのが前提条件でしょう」
「アラッド様の初めてのお相手かぁ~~~……いやぁ~~、確かに気になる話題だね」
リンはあわよくば自分がその相手として……なんて考えを持っていないタイプであり、その初めての相手に対して嫉妬心などは全くもっていない。
ただ純粋に、いったいどんな人物なのか気になっていた。
「そういえば、アラッド様は以前から四人のご令嬢と交友関係を持っているとお聞きしましたが」
進言したのは孤児院に努めるシスターのうちの一人、ラターシャ。
彼女もアラッドが女性に興味がないわけではない、という事は知っていたが、そういう浮ついた話は全く耳にしたことがなかった。
だが、幼い頃から幾人かの令嬢と付き合いがあるということは耳にしていた。
「確かにアラッド様からお話を聞く限り、その四人は並の令息たちよりも遥かに強いと仰っていましたが……今、アラッド様の隣にいるのは友人で仲間であるスティーム様。初めての相手であろう女性はいません」
「姉さん、つまりアラッド様はその初めての方と、恋仲なった訳ではないということですか?」
「おそらくそうでしょう。仮にその四人のうち、誰かとそういう関係になったのであれば、まず私たちの耳にも入ってくる筈です」
当然のことながら、学園に通う様な貴族の令嬢は淫らに異性と体の関係を持つことはまずない。
そういった行為によって受けてしまうデメリットがあまりにも多く、痛過ぎる。
「ふ~~~ん。だったら、初めての相手はフットワーク? が軽い人って事なのかな」
「おそらく、異性と関係を持ったとしても、今後の活動に支障がない方なのでしょう」
「…………ねぇねぇ。もしかしてだけど、アラッド様の初めての相手って……お店の人だったりするのかな」
「「「「「「っ!!!!」」」」」」
レオナのまさか過ぎる発言に、何人かは直ぐに反論しようと口を開こうとしたが、寸でのところで止まった。
アラッドは強面寄りの顔ではあるものの、十分イケメンに入る部類の青年。
性格は比較的まともであり、コミュニケーション能力もそれなりに高いのだが……決してチャラ男ではない。
一般的な女性が相手では、自らそういった流れに持っていけない可能性は十分にあり得る。
加えて、娼館で働く女性はそれが仕事であるため、初めの男性をリードするのはお手の物。
初めての体験で色々と失敗してしまうと、色々と自信を失ってしまう可能性がある為、初めての相手をプロに任せるというのは決して悪手ではない。
「えっと、あの、アラッド様はその方と波長が合うとおっしゃてたので、おそらくお店の女性ではないと思います」
「そ、そうでしたね。確かにその様な会話をしていました」
「あ~~、そういえばそうだったかも? そうなると……やっぱりあれかな、同業者が相手かな」
「……無難ではありますが、それが一番可能性が高そうですね」
当然のことながら、女性冒険者全員性に対して意識が緩いわけではない。
冒険の最中には男に負けず劣らず勢い良く武器を振り回し、モンスターをぶっ潰す。
男顔負けの腕力を持つ者もそれなりにいるが、彼女たちが完全に女を捨てているかと言えば……そういうわけではない。
「現役の冒険者かな? それとも引退した冒険者かな?」
「アラッド様は歳上の方を好む傾向がありますが、そこまでこう……おかしな方向に向いてはいないので、お相手の方は二十代前半から二十代後半ぐらいが妥当でしょう」
「ん~~、二十代後半ぐらいなら、もしかしたら引退してるかもな?」
「引退した女性冒険者って、ギルドから受付嬢としてスカウトされるって聞いたことがあるけど、そういう繋がりとかかな?」
リンの言葉にピンときたエレナたち。
元冒険者となれば、アラッドが好む強さを有していても不思議ではない。
加えて、受付嬢というギルド職員の華とも言える職に誘われるということは、それなりの容姿を持っているのが当然。
「私としては、アラッド様が安心してそういう事が出来る方と巡り合えただけで、色々とホッと一安心だわ~」
孤児院のマザーであるアルリアは好々婆な笑みを浮かべており、リンと同様常に余裕……というより、楽しそうな顔をしていた。
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