四百五十二話 周りをガン無視
数日後、ギーラスが勲章を受け取るために、正式に王都へ向かうことが確定。
「すいません、ギーラス兄さん」
「いやいや、全然気にしてないよ。アラッドとしては、もう一年から二年後ぐらいに行くのが丁度良いしね」
弟の考えなどお見通しといった顔で問題無いと伝え、ギーラスは数人の騎士と一緒に王都へと向かった。
「さて、アラッド……今日はどうする?」
「そうだな……適当に訓練場で体を動かすか」
ラダスの騎士団には、まだパーティーメンバーの親族であるディックスがいるが、そう何度もお邪魔する訳にはいかない。
二人は冒険者ギルドの訓練場へ向かい、アップを開始。
「大斧まで扱えるとか……本当にオールラウンダーだね」
「あんまり腕は期待しないでくれよ」
「ははっ、君にそう言われると……期待したくなるね!!!」
魔力、スキルの使用を禁じた二人の模擬戦がスタート。
スティームの要望で、本日アラッドが使用する武器は木製の大斧。
鉄製ではないため重さはやや足りないが、攻撃力は軽量級の武器と比べて高い。
(うん、やっぱり、期待しないってのは、無理だね!!)
一撃の攻撃力が勝っているとはいえ、手数は双剣を使うスティームが勝っている。
だが、アラッドは大斧全体を上手く使い、手数の差をカバーしつつ、時折小さな隙を見つけては大胆に攻める。
こうして二人がいつもと変わりない日常を送っている中……ギーラスは道中、何度かモンスターに襲撃されるも、無事に王都へ到着。
授与式までまだ余裕があるため、母校に訪れ……シルフィーとアッシュの元へ向かった。
「「ギーラス兄さん!!!」」
「二人とも、久しぶりだね」
本当に久しぶりの再会を喜ぶ三人。
周囲には中等部の学生たちがおり、ギーラスは学生時代に残した功績や騎士になってからの功績などもあって、多くの視線を集めていた。
王都に来た理由も既に広まっている為、在校生からすれば憧れのOBである。
「こっちに来る前に、偶々アラッドと会ったんだ。その時に王都に行くならってことで、二人に渡してほしい物があるって言われてね」
アラッドからのプレゼントという内容に、自然と胸が高鳴る二人。
そして……ギーラスにしては珍しく、周囲に他の学生たちがいることを忘れていた。
「はい、アッシュにはこれだよ。こっちが専用の鍵」
「か、鍵?」
中々に大きな箱に加えて、何故か開けるのに必要な専用の鍵。
いったい何が入っているのか……気にならない、訳がない。
これまた普段はクールなアッシュにしては珍しく、周囲に同級生や先輩たちがいることを忘れ、専用の鍵で箱を開けてしまった。
「ッ!!!!!????? ぎ、ギーラス兄さん、こ……こここここの骨って、もしかし、って」
「おっ、やっぱり耳にしてるみたいだね。そう、アラッドがこの前倒した強敵の骨だよ」
考える頭は残っており、骨の詳しい事情は口にしなかった。
しかし、詳しい事を説明されずとも、何の骨か分かる。
箱を開ける前から、ただならぬ気配を感じており、そこで生まれた予想が確信に変わった。
「アッシュは錬金術を頑張ってるから、機会があればそれを使ってみてくれ、らしいよ」
「…………さい、こう過ぎる」
Aランクモンスターの素材など、まだまだ自分には勿体ないという気持ちはある。
だが……それよりも目の前の素材の価値に錬金術に対する好奇心が、興奮が勝る。
「ご満悦の様子だね。さっ、シルフィーのプレゼントはこれだよ」
「わぁああああっ!!!!!」
隣に素材があるからこそ、長男が取り出した大剣にいったいどんなモンスターの素材を使われているのか、頭よりも先に本能が理解した。
「この大剣はアッシュのプレゼントの骨を素材として造られた大剣だよ」
「はぁ~~~~……カッコイイ~~~~」
今手渡されたシルフィーは当然、アッシュも未だに三男のアラッドからのプレゼントに夢中。
「ちなみに「解ってる。大会とかではこの大剣を絶対に使わない」っ……ふふ、どうやら言うまでもなかったみたいだね」
アラッドがラダスに住んでいる一級鍛冶職人に頼んで造ってもらった大剣は、そんじょそこらの大剣とは本当に比べ物にならない質を誇る。
現段階での性能に限れば……アラッドが持つ切り札の渦雷よりも上。
当然、そんな超ド級の高性能武器を振り回せば、格上の上級生……高等部の生徒が相手でも勝ててしまう。
そんな卑怯な勝利を望むシルフィーではない。
アラッドが送ったプレゼントは、良い意味でシルフィーの向上心に火を付けることになった。
「さて、それじゃあ……いや、そうだな。二人とも今日は俺がご馳走するか、一緒に外食しないか」
「やった!!!!! あっ、でもその前に模擬戦しよ!! 久しぶりにギーラス兄さんと模擬戦したい!!! アッシュも戦りたいよね!!!!」
「えっ!? いや、僕は……あぁ~、そうだね。うん、一回だけ戦りたい、かな」
「はっはっは!! 解かった解かった。それじゃ、夕食前にひと汗流そうか」
こうして急遽行われることになったギーラスたちの模擬戦。
観客には多くの学生たちが集まり、ちょっとしたお祭り騒ぎとなった。
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