四百三十七話 おバカな二人
「ガキ二人が、俺様に敵うとでも思ってんのか!!!!!!」
「思ってるから、挑んでんだろ!!!!」
「パロンの、言う通りだぜ!!!!!」
盗賊団、山嵐のトップである大柄の男の実力は、トップらしく下っ端よりも数段上であり、数的に有利であるパロンとジョウグが攻めあぐねている。
「っ!? チッ、使えねぇ役立たず共が!!!!」
自身に向かって矢が放たれたことから、部下である盗賊たちが全員やられたことを悟り、盛大に舌打ちをかます。
「アラッド、なるべく手を出さない様に見てて」
「分かった。後ろで観戦させてもらうよ」
下っ端の殲滅が終了。
ルイーゼはアラッドに手を出さないでほしいと伝える。
そんな同期の頼みに応え、エスティーナは少し呆れた表情をしながらも、気合を入れて再度弓を引いた。
(正直、パロンとジョウグだけなら厳しかったが、ルイーゼとエスティーナが加われば、もう勝負は決まったようなものだな)
言われた通り後方で観戦しながら、後で行わなければならない死体の後始末を行いながら、万が一に備える。
山嵐のトップは四人よりもレベルが上であり、対人戦の経験も豊富ではある。
ただ……これまで盗賊として行ってきた戦闘は、全て敵や標的を殺すことだけに集中して行ってきた。
しかし、現在の戦況は四対一。
一対一であれば時間をかけずに殺せたものの、今はどれだけ早く殺せるかではなく、やや戦闘……試合に近い戦況になりつつある。
(同じパーティーではないとはいえ、同期なら即席の連携度も悪くない……色々と不思議に思うことはあるけど、今回は四人の勝ちだな)
万が一の為に用意していた糸を使うことはなく、無事にパロンの双剣がトップの首を斬り裂き、戦闘は終了。
「っしゃ!!!!!!!」
勝利の雄叫びを上げるパロンたちに、微笑ましい表情を向けながら……アラッドはせっせと死体の処理を行う。
「あっ、すまん! 直ぐに手伝う」
「いいっていいって、勝ったとはいえ疲れてるだろ。もう死体もそんなに多くないし、終わるまで四人は休んでてくれ」
実力者のお言葉に甘えること数分後、死体の処理が全て完了。
売れる装備品などを回収し、アジトの外に出ると監督であるスティームと合流。
「五人ともお疲れ様。誰一人欠けることなく戻ってこれたね」
「……正直、今回はアラッドがいてくれたお陰だ」
四人を代表してパロンが少し俯きながら答える。
しかし、対山嵐戦での戦闘は盗賊たちにバレないよう、全て現場で確認していた。
パロンたちの戦いっぷりを詳しく知っているスティームにとって、それはそれ。これはこれという話。
「いや、あの山嵐のトップを倒せたのは、紛れもなく君たちの実力だ。まず、そこは君たちが誇るべき功績だ」
四人と殆ど年齢が変わらない。
だが、Cランクという立場がスティームの威厳を強め、ジョウグたちの心に言葉が響いた。
「さぁ、街に戻って酒場で浴びるほど酒を呑もう!」
この言葉に、お酒大好き冒険者であるパロンとジョウグが反応。
「ダッシュで帰るぞ!!」
「おうよ!!!!!」
エスティーナたちの制止を聞かず、二人は本当にダッシュでラダスへと走り出した。
「ちょ、何やってんの、よ…………ほ、本当に行っちゃったわ」
「わ、私たちも走らないと駄目な感じ、なの?」
「無理に走らなくてもいいだろ。二人の様子はある程度把握出来てるから、普通に歩けば追いつく」
二人が走り出した瞬間に糸をくっ付けていた。
「アラッドがそう言うなら、大丈夫そうだね」
何をしたのか、正確には解らない。
それでもこれまでアラッドと関わってきた経験から、例え関わった期間が短くとも、そこには確かな信頼があった。
「あっ、いたいた!!」
アラッドの予想通り、一時間以内にはアドレナリンと体力が切れた二人と合流。
四人が到着した時、二人は脇道には逸れていたものの、完全に地面に突っ伏していた。
何はともあれ、翌日の夕方ごろには無事にラダスへ帰還。
冒険者ギルドへ報告後、アラッドたちは速攻で酒場へと向かった。
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