四百三十六話 逃がさない

「がっ!?」


「っ、ぁ……」


「ナイスショット」


放たれた二本の矢は寸分狂わず二人の見張りの喉へ直撃。


「それじゃ、ここから僕は基本的に何もしないから、皆で頑張ってね」


「うっす!」


「おうよ! 任せてくれ!!」


「ヘマしない様に気を付けるわ」


「ほんとそれ大事だよね!」


「……」


四人が気合を入れる中、アラッドはスティームとアイコンタクトで、最後のやり取りを行う。


(四人を頼んだよ、アラッド)


(あぁ、任せてくれ。スティームさん)


スティームはギルドから支給されたアイテムを発動し、姿を消す。


そして五人は双剣使いのパロンをメインとして前進。

ルイーゼは嗅覚に全集中し、敵の気配を探る。


「前、三人がこっちにくる」


「分かったわ」


エスティーナは即座に三本の矢をつがえ、即射。


「ッ!!?? 侵入、しゃ、だぁ……」


一人だけギリギリで矢を弾き、間一髪を逃れた。

直ぐに仲間へ侵入者の存在を知らせようとしたが、声を完全に張り上げる前に、ルイーゼの短剣が喉に刃を突き立てた。


(大将がどの程度の強さなのか分からないが、本当に俺はサポートに徹するだけで良さそうだな)


途中、多くの盗賊の気配がある場所とは別の脇道からも盗賊の気配を察知。

しかし……アラッドは自信あり気な表情で、目指す場所はまず大勢の盗賊がいる場所で良いと伝えた。


「うし。エスティーナ、アラッド。頼む」


「任せて」


「撃ち終わるまで突っ込むなよ」


二人は多数の風矢を発動。


放たれた直後に魔力の反応を感知した者もいたが、だからといって二人が放った大量の風矢をなんとか出来る術はない。


「て、敵襲だあああああ!!!」


「冒険者の野郎どもだ!! お前ら、さっさと武器を取れ!!!!」


突然の奇襲に焦る者はたった数人。

風矢を食らいながらも、近くに置いていた武器を手に取り、侵入者の排除を行う。


(よし、さっさと持ってこよう)


盗賊団、山嵐のメンバーが怒号を上げてパロンたちに襲い掛かる中、アラッドはここまで来る途中に仕掛けていた糸を動かす。


「「「うわああああああッ!!??」」」


別の空間に居た盗賊たちは脚に見えない糸が巻き付き、侵入者の知らせを聞いて逃げることが出来ず……無理矢理勝負場に連れてこられ、仲間の元へ投げ飛ばされた。


「うぉ!? お前ら、何やってんだ!!!」


「うぉらああああッ!!!」


「がっ!!!??? んの、ガキが!!!!」


基本的に盗賊たちの方が数が多く、パロンたち円の陣形で対応。


そんな中で、粘着性の糸を使って数が不利になる状況をつくらせない。

鋼鉄製の糸で脚や腕を切断してしまうことも出来るが、それはパロンたちの為にならないと解っているので、あくまで悪い状況をつくらない様に動く。


「ガキ共が!! 生きて帰られると思うなよ!!!!」


一対一の対人戦に関しては、ややパロンたちの方が上。

しかし、盗賊の多くは彼らよりも長く生きており、レベルがそれなりに高い者もちらほらといる。


身体能力で押される場面もあるが……盗賊たちが彼らを殺れると思った時、そういう時に限って何故か体のバランスが崩れる。


(っ!!?? いったいなんなんだ、よ、ぉ……)


大きな隙が生まれると、ジョウグたちはその隙を逃さない。


「チッ!! 俺の盗賊団を……山嵐をよくもやってくれやがったな」


それらしいセリフを吐きながら、大きな山が動く。


「パロン、ジョウグ!! こっちは俺たちでやる!!!」


「頼んだ!!!」


「こっちは任せてくれ!!!!」


パロンとジョウグをボス戦に送り出し、アラッドはサポートから前衛にスイッチ。


「後衛職が前に出てくるとか馬鹿かよ!!!!!!」


「どっちも出来るだけだ」


淡々とした表情で事実を口にし、カウンターで首に手刀をぶち込んでいく。


「ッ、ッ!! ……」


派手に敵を殺さずとも、

首を折ってしまえばそれだけで死ぬ。


自分に向かってくる敵だけは瞬殺していき、そんなアラッドの実力を信用しているエスティーナはがっつりルイーゼのサポートを行い、数分も経たずに下っ端連中は全て地面に倒れ伏した。


――――――――――――



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