三百三十九話 笑えて面白いイベント
「まだ話は終ってねぇぞ!!!!」
後方から叫び声が聞こえるが、全て無視。
クロ共にギルドから離れた。
「何と言うか、元気いっぱいな奴らだな」
彼らが、自分に対してあぁいった発言をしてしまう。
その気持ち、ぶつけようと行動に移した考えなどは解らなくもない。
不敬だぞ!!! と言いながら体の一部を斬り落としたりするつもりもない。
ただ……先程アラッドが彼らにアドバイスしたように、場合によっては開始のゴングなしに攻撃を仕掛けられることもある。
「……ふふ。やっぱり笑ってしまうな」
一応立場だけを考えれば、それなりの立場。
冒険者としてのランクも、既にDと……実際のところ、先程の少年たちより一つ上。
そんな自分に対し、あそこまで大きな態度を取れる。
まさに、ある意味凄いという言葉が相応しいと言える。
「ワゥ?」
「問題無いよ。寧ろ、笑えて面白いイベントだからな」
クロはアラッドが、何か面倒な問題に巻き込まれてるのではと勘付く。
傍から見れば、そう思えなくもない状況だったが、本人にとっては笑い出す程面白い喜劇。
我ながら性格が悪いなと思いながら、翌日も冒険者らしくギルドに向かう。
そこには、既に先日絡んで来た少年を含むパーティーはいなかった。
代わりに、まだギルドに残っているルーキーたちは、アラッドに敵意や嫉妬……とりあえず負の感情を向けていた。
(バカどもが……あのルーキーも既にDランクではあるが、冒険者になりたてって状況は変わらないんだ。仲良くしときゃ良いもんを)
貴族や商人でなくとも、人脈というのは大切な仕事道具。
アラッドという冒険者の中でも、極めて異質な存在と仲良くしておけば、いずれ転落しそうになった時、這い上がれる力の一つになるかもしれない。
(こんな事を考えるなんて……俺も歳を食ったってことか)
感情で動くルーキーなんて、三流どころか四流も良いところ。
そんな先輩から後輩に伝えるアドバイスだが、当然そのアドバイスを素直に受け入れる後輩は少ない。
だが、それなりに先輩と言える年齢になった今、そのアドバイスを身に染みて理解出来る。
「こいつにするか」
アラッドが手に取った依頼書は、オーク二体分の肉の納品。
適性は確かにDランクだが、討伐依頼なので、ただモンスターを倒すだけでは達成できない。
とはいえ、アラッドからすれば非常に簡単な依頼だった。
「おっ、とりあえず一体発見」
街の外へ移動し、クロと共にオークを探し回っていると、昼前に一頭を発見。
サクッと近づき、魔力を纏った糸を操り、耳の穴へぶっ刺した。
アラッドの存在にこそ気付いたが、自分の頭部付近に迫っていた存在に気付くのには一足遅く、気付いたときには脳がバラバラに切断されていた。
脳だけを破壊し、戦闘終了。
肉を全く傷付けずに、一頭目の討伐を終えた。
その後、昼食から一時間後にもう一体発見し、同じ方法で討伐。
クロに見張りをしてもらいながら解体。
あっという間に、完璧な二頭分の肉をゲット。
「さて、どうしようか」
いつも通り周辺をうろうろするか……それとも、クロの背中に乗って離れた場所に向かい、高ランクのモンスターと遭遇する確率を少しでも上げるか。
「……今日は止めとくか」
夢中になって、門限の時間に間に合わないのは困ると思い、街から遠く離れた場所に向かうのは止め、近場での探索を続けることにした。
「ん? ……良い音だな」
探索中、少し離れた場所から良い音が……実力が拮抗している戦闘音が耳に入る。
「結構重い音が連発してる……巨人系のモンスターと戦ってるのかもな」
横取りするのはアウトだが、戦闘を眺めるのは構わないだろうと思い、二人は戦闘が終わる前に音が聞こえる方へ向かった。
そこには……一人の女性剣士と、一体のサイクロプスが激しい戦闘を繰り広げていた。
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