三百二十六話 愛を語るのであれば
途中からフローレンスが絡んできたことで、パーティーが終わるまで、アラッドの元には誰も寄り付くことはなかった。
レイたちでさえも、邪魔するのは悪いと思い、二人の話に加わるのを遠慮。
そろそろ離してやってくれませんか、とも言えなかった。
(なんか、変に気に入られたのかもしれないな)
アラッドとしては騎士の爵位を得るため……少々気に入らないという怒りをぶつけた。
それはフローレンスも解っている。
自分の思いが伝わっているのを確信していたが、そんな相手が自分にニコニコと近寄ってきて、長々と話そうとすれば、困惑するのも無理はない。
ただ……アラッドとしても、一度ぐらいはフローレンス・カルロストと一対一で話すのも悪くないと思えた。
どうせ今後、目の前の女王と話す機会などない。
であれば、今日という夜ぐらいは、互いの考えや意見を交えるのもあり。
そう思い、パーティーが終わるまでの彼女の話し相手を続けた。
「最後に、一つ言わせてもらいます」
パーティーも終了し、各々好きなように解散するタイミングで、アラッドは真剣な表情で告げた。
「愛だのなんだのを語るのであれば、それを持っていても環境に抗えない者たちを助けるべきだ」
「……」
最後の最後に予想していなかった言葉を告げられ、完全に面食らった状態のフローレンス。
「人によっては偽善と思われるかもしれないが、そういう者たちを助けてこそ、真の意味で愛について語れると個人的に思っている。では、機会があれば」
言いたい事を伝え終り、レイたちの元へ戻るアラッド。
他に言いたい事がまだあるが、一番伝えたかった内容を伝えられ、満足げな表情で去っていた。
「彼は、本当に十五歳なのでしょうか?」
アラッドが最後に伝えた内容は……まだ周囲に残っていた学生たちから見て、さすがに少々生意気では!? と思ってしまうもの。
しかし、残っていた騎士とフローレンスは、彼が行っている善行を耳にしていた。
(…………そう、ですね。言葉だけでは、お腹は膨れませんね)
最後の最後で、何故アラッドが自分に対し、気に入らないという眼を向けていたのか、深く納得した。
「またお話ししたいですね」
多少態度が緩和したと思えなくもないが、依然変わらずアラッドは自分に対し、そこまで好意的ではない。
そんな相手、普通であれば「もう関わりたくない!!」と思うであろうが、女王は機会があれば再度、自分を倒した青年と話したいと思った。
「アラッド、いつ学園を卒業するんだ?」
「おそらくだが、十日以内……早ければ、五日以内には卒業出来る」
個人戦のトーナメントに出場し、パロスト学園に優勝を持って帰る。
その約束を果たし終えたため、アラッドは学園を特例として速攻で卒業……更に、国から騎士の爵位を授与される。
「たった数か月で卒業……おそらく、今後も起こりえない内容だね」
ベルの言葉に、リオたちはその通りだと納得。
しかし、強者でも成し遂げられない偉業を達成したであろう本人は、もう一度その偉業が行われると思った。
その偉業達成するかもしれない人物は……弟であるアッシュ。
(あいつなら、俺と同じく高等部の一年で特例として卒業できそうな結果を叩きだしそうだけどな)
今大会ではシルフィーが一年生ながらに、個人戦のトーナメントでベストフォーという結果を叩きだした。
だが、アッシュは双子であるシルフィーのサポートに回り、大会には不参加。
参加を強制することは出来ないが……その実力はフールやアラッドたち家族、加えて担任の教師なども認めている。
可能性としては十分にあり得るのだが、本人の目的は錬金術の研究、技術向上。
それが目的であるため、偉業が再度達成される可能性を頭から消したアラッド。
弟ならば、簡単に自分の意志を曲げないだろうと思っていると、男子寮の自室に戻る途中……偶然、本当に偶然ドラングに出会ってしまった。
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