二百七十三話 やらかしは謹慎確定?
「ふぅ~~、この生活があと三か月か……まっ、我慢だな」
レイたちと一緒に学園生活を送る。
これに関しては、決して悪い感情はない。
寧ろ楽しいと思っている部分すらある。
だが、模擬戦という場できっちり実力を示したとしても、アイガスたちのアラッドを見る眼は変わらない。
相変わらず反抗的、嫉妬や妬みや憎悪が混ざった感情の目を向けている。
気にする必要がないと言われればそれまでだが、鬱陶しいと思ってしまうのも仕方ない。
「……いやいや、ダラっとしてる暇はなかった」
そう……アラッドには一日の授業、食事や風呂などが終わっても、まだやるべきことが残っている。
それは、依頼されているキャバリオンの制作。
学園に入学したからといって、既に依頼されている制作をストップさせる訳にはいかず、依頼された素材などを取り出し、寮の中で制作……とはいかない。
うっかり床を傷付けてしまう可能性などもあるので、一旦寮から出て錬金術の実験場などに使われている場所へと向かった。
「すいません、担当の教師の許可がなければ生徒さんは使えません」
「……そうなんですね」
勿論、その実験場には無許可では入られない。
しかし……錬金術の授業を受けるには、通常授業以外の授業を選択しなければならない。
アラッドはパロスト学園を三か月で卒業するつもりなので、特にそういった授業は選択していなかった。
(……仕方ない、明日その担当教師にあって、許可証? を得るしかないな)
今日は仕方ないと思い、部屋に戻ろうとすると、一人の教師がやってきた。
「おや、君は確か……アラッド君だね」
「はい、アラッド・パーシブルです」
「やはりそうか。君の噂は聞いているよ。一、技術者として君を尊敬している」
「ど、どうも」
どう見てもただの教師ではない白衣のおっさんに褒められ……とりあえず照れるアラッド。
「もしや、実験場を使いたいのかい?」
「はい、寮の中で仕事をするのは危ないと思ったんで」
「はっはっは! それはそうだな。以前、寮の部屋で錬金術を行い、素材の分量を間違えて爆発を引き起こし……謹慎処分になった生徒がいた。君の判断はとても賢明だよ」
白衣のおっさんの話は嘘ではなく、過去には本当にやらかしてしまった研究熱心な生徒がいた。
何故許可証を貰わなかった?
そう思うかもしれないが、実験場の広さはあまり大きくない。
元々未来の騎士や宮廷魔術師を育てるための学園。
とはいえ、そういった授業をつくったからには、それなりの設備を用意された。
そこではどんな爆発などが起こっても、周囲に迷惑が掛からないよう頑丈に作られており、学園に保管されている素材も中々の物ばかり。
授業以外で生徒が使える実験場は狭いが、生徒の為に金はしっかり使われている。
「君、アラッド君を実験場に入れて上げてくれ。彼は学生でありながら、多くの客を抱えているんだ」
「か、かしこまりました!!!」
白衣のおっさんにもアラッドが制作したオリジナルのマジックアイテム、キャバリオンのことは耳に入っていた。
「ありがとうございます」
「当然のことをしただけだ。確かに君は僕の授業を取っていないが、あの素晴らしいマジックアイテムを造るのであれば、実験場で行わなければ万が一がある」
白衣のおっさんに案内されて実験場に到着すると、何人かの生徒が遅い時間まで錬金術に励んでいた。
アラッドが錬金術の担任教師と一緒に入ってきたことで、生徒たちの視線が一瞬……アラッドの方に全て向けられたが、数秒後には自身の行っている錬金術に意識を戻した。
(集中力、マジ高いな。一瞬だけ俺の方に意識向いたけど、速攻で自分の空間に戻った)
この環境なら、以前通り集中してキャバリオンを制作できるだろうと思い、アラッドは亜空間の中から造り途中のキャバリオンを取り出した。
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