二百六十四話 噂は本当だった
入学式が終われば、アラッドは完全にシルフィーとアッシュとは別行動。
入学式の前に教師から伝えられたクラスへと向かう。
クラスはC、B、A、Sクラスの四つ。
勿論、首席で入学したアラッドはSクラス。
クラスは基本的にCからSの順に実力や学力が分けられている。
(アッシュの奴、随分と覇気がないというか……いや、雑ではなかったんだけど……ちょっと心配だな)
雑でも下手でもなく、アッシュは先程パーシブル家の恥にならない挨拶を壇上で行った。
しかし、元々アッシュがあまり闘争心を撒き散らさないタイプということもあり、身内から見ても覇気がない様子が丸見え。
(虐められたりしないよな……そんなことすれば、逆にアッシュのボコボコにされるか)
首席となったのは学力の高さだけではなく、戦闘力の高さも相まっての結果。
(というか、仮にそんなことになれば、シルフィーが黙ってないか)
アッシュの強くなることにあまり関心がないという態度に関しては、今でもあまり良く思ってないない。
それでも、あまり興味がないことでも毎日最低限の分は続けている。
この事に関してシルフィーは素直にアッシュを尊敬しているため、もし……仮にアッシュの身になにかあれば、アッシュが行動を起こす前に、シルフィーの鉄拳がとんでもおかしくない。
「……あ、アラッド、か?」
「その声は……レイ嬢。お久しぶりですね」
「……アラッド!!!」
声を掛けられ、後ろを振り向くと……そこには三年前よりも成長したレイがいた。
元々キリっとした容姿を持っていたが、今は凛とした美しさがある。
スタイルも女性らしくなっており、これは周囲の異性が放っておかないだろう……そう思って当然。
実際のところ、その考えは間違っていない。
間違っていないが……今のところ、レイが同じ学生に好意を抱くことはない。
「っと、あの……レイ嬢」
「……す、すまない!!」
昨年は色々と忙しい時期であったため、レイは一度もアラッドに会っていない。
それはいつも同じグループで行動しているベルたちも同じだった。
(い、良い匂いがしたな)
久しぶりにアラッドに合えたことが嬉しく、レイは思わずアラッドにハグをしてしまった。
「はは、どうやら噂は本当だったみたいだね」
「ベル……それに皆も久しぶりだな」
少し離れた場所から子供の頃より成長したベル、リオ、ルーフ、マリア、エリザ、ヴェーラが現れた。
「あらあら、本当に入学したのですね、アラッドさん」
「お前がここパロスト学園に入学したって話、ちょっと噂になってたんだぜ」
「マジか……まっ、そうなるのも無理はないか」
十五歳になれば、学園に入学はせず、冒険者になる。
これはアラッドが幼い頃から明言していた内容。
この内容はベルたち以外の令息や令嬢たちも知っていたので、本当に何故学園に? と思ってしまう噂の内容だった。
しかし、現にこのとおり……アラッドはパロスト学園の入試を受けて合格し、パロスト学園の制服を着ている。
「それで……アラッド、何が目的で学園に入学したんだい」
友人として、アラッドが冒険者になることを止めた……そんな選択肢を取るとは思えない。
それはリオたちも同じ考えだった。
「……とりあえず、教室まで移動しようぜ」
教室には直ぐに集合し、アラッドは速攻でベルたちに囲まれる。
「えっとだな……簡単に言うと、倒したい奴がいるから、だな」
「倒したい奴というと、僕たちと同じ学園の生徒ということかな」
「そうだな。パロスト学園の生徒ではないけどな」
パロスト学園の生徒ではない……この言葉だけで、頭の回転が速いベルとマリアは直ぐにアラッドがどういった目的で学園に入学したのか、ある程度予想が付いた。
(なるほどなるほど……確かに、アラッドならあの人を倒せる強さがあるね)
だが、それでもベルには少し引っ掛かる部分があった。
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