二百二十七話 それはあなたもですが
パーティーが終わり、その翌日には屋敷へと向かい……帰り道では盗賊に襲われることはなく、無事に到着。
「アラッド様、おかえりなさいませ」
屋敷の前では既にエリナたちが立っており、アラッドを出迎えていた。
「おう、ただいま」
「……アラッド様、もしかして何か面白いことでもありましたか?」
「ん? もしかして顔に出てたか」
「顔にといいますか、雰囲気に現れてたって感じですね」
今に限っては特にアラッドの表情はいつも通り。
ただ、レオナは言葉通りにそのいつもと違う雰囲気から、パーティー会場で面白いことが起こったのではと予想。
それは見事に的中していた。
「部屋に戻ったら教えるよ」
現在の時刻は昼過ぎ。
料理人たちが急いでアラッドたちの分の昼食を作り、それを食べ終えて自室に戻り……アラッドはレオナたちにパーティー会場でどんな面白いことがあったのかを伝えた。
事前に感情を抑えることはないと伝え……話を聞き終えたガルシアとレオナ、そしてリンはアラッドの言葉に甘えて爆笑した。
「な、なるほど……そんなことが、あったんですね」
「アラッド様に絡む時点で相当馬鹿だけど、糸でそんな風に……ぷっ、ははははは!!!」
「なんとも言えないダサさっすね。会場でも、思いっきり笑われたんじゃないっすか?」
「令嬢からは悲鳴、令息から笑い声が漏れたな」
令嬢たちから悲鳴が零れたという点について、エリナとシーリアは良く理解出来た。
(アラッド様に絡み、多くの罪を重ねたのであれば潰されるのも当然でしょう。ですが……中々に屈辱的な罰を与えたものですね)
(い、衣服を解かされてパンツ一つだけに……)
シーリアは自分がそうされてしまった光景を頭に浮かべてしまい、急に顔を赤くさせた。
「シーリア、顔が赤いけど大丈夫か」
「は、はい! 大丈夫でひゅ!!」
思いっきり噛んでしまい、少しの間静寂が生まれたが……直ぐにそれをガルシアが破った。
「それにしても珍しいですね」
「俺が喧嘩を買ったことがか?」
「いえ。相手の令息の態度を考えれば、アラッド様が受け流す様な真似はしないと思っています。ただ、ドラング様を庇う様な発言をするのが珍しいなと思って」
弟であるドラングは、兄のアラッドをライバル視……敵視しているといっても過言ではない。
それはこの屋敷に来てある程度経たば、自然と解る。
そんな弟を庇う様な発言をする……ガルシアがアラッドの立場であれば、同じ様な大人の対応が出来ない。
「……本当にドラングが俺のライバルの様な存在だとは思ってないよ。現時点ではな」
ロンバーに対して伝えた言葉は、かなりリップサービスが過ぎだと自分でも思っている。
ただ、それでもフールに伝えた通り……同じ家にいるのに全く話さない仲であっても、知っていることがある。
「それでも、あいつが必死で前に進もうと努力しているのは知ってる。俺が弱いかもしれないって噂はあいつが撒いた種だけど、そこはほら……あいつもまだ子供だろ」
あなたも年齢的に十分子供ですが。
という言葉を五人とも口から出さずに飲み込んだ。
「口が悪くなってしまうことはある。それは仕方ない……大人になっても口が悪い人はいるしね」
「そ、そうかもしれませんね」
「だろ。だからまぁ……あれだ、ちょっとぐらいお兄ちゃんらしいことが出来るんじゃないかと思ったんだよ」
ドラングとしては、今でもアラッドは自分が父親を……フールを超える為の踏み台。
その気持ちは変わっていない。
だが、あの時から一度もアラッドに勝負を仕掛けていない。
それが……ドラングがアラッドは自分よりも強い存在だと認めていることになる。
しかし、他家の子供たちはそこまでドラングの細かい事情を知らない。
故に、次に出席するパーティーでは立場が悪くなっている可能性が高い。
(父さんが侯爵家の当主で、ドラング自身が子供にしてはそれなりに強いってのもあるから、虐められるようなことはないかもしれないけど、気分は良くないだろ)
アラッドはそれを危惧し、あの場でドラングを庇う様な発言をした。
(捻くれて悪の道に進まれても困るしな)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます