二百十話 交流会、一応終了
レイ嬢との狩りを行ってから半年ごと……アラッドは予想通り、エリナが用意した胃薬を服用していた。
「アラッド様、お気分は大丈夫でしょうか」
「……あぁ、なんとか」
先日、グスタフ公爵家の令嬢であるヴェーラ嬢との個人的な交流が終わり、家に帰ってきた。
(得るものがなかったとは言わないけど……それでも、胃薬が必要になるほど大変だったな~~~)
しかし……マリア嬢とエリザ嬢との交流会も終わり、今しばらくは胃が痛くなるイベントはない。
そう思うと気分が軽くなる。
「よし、行くか」
朝食を食べ終えたアラッドはいつも通り軽く訓練を行ってから、直ぐに森の中へと入ってモンスターハントを始める。
ちなみに、レイ嬢との交流から半年がたち……アラッドは七歳から八歳へと歳を重ねた。
幼い時の成長幅は大きく、分かる者からすれば、大きく成長していた。
「……今日のアラッド様は、どこか活き活きとしてるな」
「そうね。何か良いことでもあったのかしら。レオナ、あなたは何か知らない?」
「えっと……多分、ご令嬢方との交流会が全て終わったからではないでしょうか」
まさにその通り。
四令嬢との交流会が終了し、胃がむかむかする日々から解放されたアラッドは……表情から負の感情が全て消えていた。
「あぁ、なるほど。そういえば、グスタフ公爵家のご令嬢との交流が終わって、一応全ての交流会が終わったんだったな」
「普通は喜ぶべき交流会だと思うんだが……アラッド様はちょっと変わってるからな」
「あまりそんな事を言っては失礼よ。でも……胃薬が必要になるほど辛いと感じるのは……少しあれよね。リン、アラッド様はご令嬢たちと話したりしてる時、不快そうな表情をしてたのかしら」
「ん~~~~~~……そんなことはないと思うっす。アラッド様も貴族の令息だから、ポーカーフェイス? は、きっちり出来てたと思うっす」
「私も同じ感想ですね」
二人とも交流会に同行したことはあるので、アラッドが令嬢たちとどの様な表情で話していたかは覚えている。
(そんなに苦しそうな表情はしてなかったと……というより、雰囲気的にも交流会自体はあまり嫌っていなかったような……いや、アラッド様が本心を隠すのが上手いだけ?)
(交流会のメインのご令嬢が、アラッド様が興味を持てるプランを持っていたから、そこまでアラッド様も目が死んだりはしていなかったような……でも、アラッド様が目指す道は冒険者なのを考えると、あまりご令嬢たちと仲良くなることすら、嫌なのかもしれませんね)
騎士になるつもりがなければ、まさかの宮廷魔術師になるつもりもない。
「けどよ、相手のご令嬢たちはアラッド様が正真正銘のハイスペック令息だって分かれば、もうぞっこんだったんじゃないのか?」
「……ぞっこんかどうかは分からないっすけど、興味津々……って感じだったと思うっすね」
「そうですね。アラッド様に恋愛的な意味で惚れているかまでは詳しく分かりませんでしたけど、一人の人間としての興味は強く持っていたかと」
「なるほどなるほど……それを聞くと、やっぱりアラッド様はモテモテだな」
「あれだけ色々と出来て、モテない方が無理だと思うわ」
兵士たちはアラッドが戦闘以外にも、料理やその他もろもろが出来ることを知っている。
貴族の男として、強いというのは確かなステータスではあるが……異性にモテる要素は当然、他にもある。
「それに……また綺麗な戦い方をするよね」
兵士たちの前方では、複数のコボルトとその上位種がアラッドに襲い掛かるが……一切爪や武器に触れることなく、切れ味抜群の糸を使って首チョンパ。
今まで何度か糸を使ってモンスターを倒すところを見てきた兵士たちだが、目の前で行われた瞬殺劇は以前までの動きと比べ、無駄が消えたように感じた。
「はぁ~~~、楽しかった」
そして夕食前には屋敷に戻り、減った腹を満たすのだが……食事後、アラッドは直ぐにフールに呼ばれた。
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