百三十八話 気になる内容
お茶会を終えた翌日から家に帰るまで何度かモンスターに襲われることはあったが、フールやアラッド、護衛の騎士たちが負傷することはなく無事に屋敷へと帰ってきた。
「お帰り、アラッド」
屋敷に帰ってきた時間はまだ昼過ぎということもあり、アラッドは実母のアリサの部屋へと連れてこられた。
「さぁ、どんなお茶会だったのか聞かせてちょうだい!!」
「は、はい。分かりました」
普段から全く他家の令息や令嬢と絡まないアラッドなので、母親のアリサとしてはいったいお茶会でどんなことを話したりしたのかが物凄く気になっていた。
そしてアラッドはお茶会開始早々に一人の令嬢に模擬戦を申し込まれ、従魔について話したり、五歳の誕生日に授かったスキルの糸について軽く説明したこと等を話した。
「なるほどね……とりあえず、お疲れ様って感じね」
「そうですね。正直とちょっと疲れました」
「そうよね。だって、お茶会に参加して模擬戦を申し込まれるなんて全く考えてなかったでしょ」
「はい、全く考えていませんでした」
レイから模擬戦を申し込まれた時、アラッドの思考は少しの間、完全に停止していた。
「話を聞く限り、その子はかなり強かった様ね」
「身体能力の高さには本当に驚かされました。おそらく特別な体質だと思うのですが、現時点で俺のようにレベルを上げている者でなければ、同年代の男子は全く敵わないかと」
「あら、そんなに強かったのね……あと十年もすれば、私と良い勝負ができそうね」
「は、ははは……そうかもしれませんね」
やる気満々の母の表情を見て、アラッドは引き攣った笑みを浮かべた。
ただ、アリサは冒険者を引退してからもパーシブル家に仕える兵士や騎士たちと一緒にバリバリ訓練を行っている。
そしてアラッドと同じ様に護衛を付けながらではあるが、戦闘の勘が鈍らないようにとモンスターとの戦闘も行っている。
(後十年も経てばレイの体は殆ど成長しきるだろうから……そうなると、やっぱり身体能力ではレベルにもよるけどレイの方がやや有利……か? でも技術の差ではやっぱり母さんの方が上だから……戦えば母さんが勝ちそうだな)
レイが逸材であるのは間違ない。
しかし母の努力や実力を知っているからこそ、十年後ぐらいではレイはアリサに勝てないと思った。
「それにしても、面倒な子がいなくて良かったわね」
「そうですね……ちょっとあまり大きな声では言えないんですけど、一人だけこいつは面倒な人かもと思ったんですが、その人も特に性格が腐ったような人ではありませんでした」
「人は見かけによらないってところね」
アラッドがこいつは面倒な子なのでは? と思った人物は見た目が明らかに強気なお嬢様であるエリザのことだった。
確かにアラッド以外の子供がエリザを見ても、あまり良い印象を持たない可能性が高い。
しかし今回のお茶会で……他の令息だけではなく、アラッドにもまともな態度で接していた。
「あっ、その子たちに糸の説明をしたのよね」
「説明といいますか……糸というスキルを使って、こういった攻撃を出来るのだと一人の令息にだけ教えました」
「……その攻撃方法はどの攻撃を説明したの」
糸のスキルには様々な攻撃方法があり、アリサはその令息に子供にはちょっとホラーな内容を教えたのではないかと少々心配。
だが、アラッドはベルに対してそんなホラーな攻撃内容は教えていない。
ただ……アリサはその攻撃方法を聞いた瞬間、大声で笑ってしまうのを堪えるのに必死になった。
「ふぅーーーーー……はぁーーーーー…………ぷ、ふふふ。なるほど、それも確かに糸を使った攻撃方法の一つね」
その攻撃方法は今ここで初めて知った。
全くもってホラーではない。
ホラーではないが、アリサはベルと同じくアラッドが伝えた攻撃方法は切り札になり得る攻撃方法だと思い、つい頭でイメージしてしまい、再び爆笑するのを堪えるはめになった。
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