百三十話 直ぐに判別出来ない
「おいおい、マジかよ……凄いな!!!」
「そうだね。こうなるなんて……ちょっと予想外だよ」
「す、凄い」
アラッド以外の三人の令息は目の前で行われている模擬戦の結果に驚かされていた。
レイの頼みによって始まった二人の模擬戦。
腕力には自信があるリオでも今のところ、レイには敵わないと思っている。
だが、今レイと模擬戦を行っているアラッドは剣戟で一歩も引いておらず、寧ろ押していた。
「こうなるとは……全く予想していませんでしたわ」
「同感ですね。二人ともスキルを使用していないようですが……」
「そうね。驚きの結果ね」
エリザとマリアも令息三人と同じ様な反応をするが、ヴェーラは驚きの結果と口にしたが、こうなることはある程度予想出来ていた。
(やっぱりこうなったわね……アラッドが優勢になるとは思っていた。思っていたけど、それでもこうやって目の前で実現すると驚かされるわ)
理由は明確に解かっていないが、レイは他の同年代と比べて圧倒的に身体能力が高い。
それはスキルやアラッドの様にレベルが高いという訳ではない。
その強さを実際に測ったことがあるヴェーラはアラッドが優勢と予想していても、いざその場面を見ると少なからず驚きを感じていた。
「くっ! 本当に、強いのだな!!!」
「それはこっちのセリフだ、レイ嬢。どう考えてもドラングより強い」
木剣をぶつけ合う両者の表情は明らかに違い、レイには余裕がなく、アラッドにはどんな攻撃が来ても耐えて反撃できる余裕があった。
(ドラングよりも強い、か……それはこちらのセリフだ、アラッド)
レイはドラングと軽く面識があり、ドラングがいつも兄のアラッドに対して否定的な発言をしていたのは頭に残っている。
そして……ドラングがアラッドは自分が父を超える為の踏み台と言ったのも覚えている。
ドラングから多少の傲慢さは感じれど、訓練を怠り才能に胡坐をかくようにも思えなかった。
事実として、ドラングはまだモンスターと戦う実戦は行っていないが、訓練は毎日欠かさず行っている。
時には地面にぶっ倒れるまで集中し、全力で訓練に取り組んでいる。
だが……それでもドラングがアラッドを踏み台というには、あまりにも高過ぎる踏み台では無いのかと感じだ。
(現状、どう考えても私の劣勢、だな!)
お互いに強化系のスキルは一切使っていない。
純粋な身体能力と剣技のみで勝負している。
そして模擬戦が始まって直ぐに自身の小さな驕りを悔いた。
そんなレイと違ってアラッドは何故、レイの身体能力が同年代と比べて圧倒的に高いのか、その要因についてある程度予測できたので……それが本当に合っているのか知りたかった。
(多分だが、筋肉繊維の密度が常人と比べて高い、で合ってるのか? とりあえずそんな感じだろうな)
スキルの中には~~の加護という、常時発動する内容ののスキルがある。
だが、仮にレイが身体能力に関する加護を有しているのであれば、前情報としてアラッドの耳に入っていてもおかしくない。
(甘〇寺や若〇みたいな特異体質を持ってるんだろうな……そういのって、この世界の技術じゃ直ぐに解らなさそうだな)
自身の考えが百パーセントと合っているとは断言出来ない。
だが、それでも最初に剣をぶつけた瞬間……アラッドは「とんでもない腕力だ!!」とは思わず、剣を通してレイの中身がどっしりしていると感じた。
(これはベルが俺を心配するのも分かる。ただ身体能力が高いだけではなく、剣技の腕も高い)
ただ力任せに剣を振るうのではなく、その剛剣の中に確かな技を感じる。
「ふんっ!!!!」
「くっ!!!!」
何度目になるか分からないつばぜり合いにレイは押され、後方に跳ばされる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
数分ほど全力で動き続けたレイからは多くの汗が流れており、遠目からでも体力を大きく消費しているのが分かる。
ただ、その眼に諦めの感情はなく……寧ろキラキラと輝いていた。
「この辺りで止めにしよう」
だが、ここでまだまだ表情から余裕なのが分かるアラッドが模擬戦終了を提案した。
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