百十二話 予想以上に堅い

「あの二体が団長、副団長だったって感じか?」


「そうかもしれません」


下っ端に戦わせ、高みの見物をしていた二体のスケルトン。

片方は他のスケルトンと比べて体が大きいスケルトンナイトアーマー。

そしてもう片方のスケルトンはスケルトンメイジの上位に当る存在、スケルトンウィザード。


二体ともCランクのモンスター。

順調にレベルを上げているアラッドでも確かに脅威になる存在ではあるが……アラッドは過去に同じCランクモンスターであるメタルリザードをクロと一緒に倒していた。


そしてその頃よりも少しではあるが、レベルアップしている。


(でも、さすがに二体を同時に相手するのは厳しいかもな……一体は任せるか)


クロと一緒に戦うのであれば勝率はグンと高くなるが、冷静に生き残る確率を高くするために一体は三人に任せると決めた。


「なぁ、あっちのメイジじゃなくて……ウィザード? の方は三人に任せても良いか」


アラッドから何かを任せられる。

それは多種多様な面でアラッドを尊敬している彼らにとって、やる気が出る流れだった。


「任せてください」


「きっちりぶっ潰すっす!!!!」


「お任せください。アラッド様がそちらに集中出来るように戦います」


全てのスケルトンやナイトにアーチャー。リッチなどが倒されたタイミングで残り二体のリーダー格は逃げることなく、戦うという選択肢を選んだ。


スケルトンなので声は出ないが、それでも「これからお前たちを殺す」といった明確な殺意を四人と一体に向ける。


「こいつは結構動きが滑らかだな」


他のスケルトンやナイト、ランサーと比べて動きが滑らかなナイトアーマー。

ただ体が大きいだけではなく、他のスケルトンたちと比べて骨が太く堅い。


(この大きさでここまで動けるのは……ちょっと反則って感じがするな)


そんなことを考えながらもアラッドは身体強化のスキルを使用し、振り回される大剣を軽やかに躱していく。


「ワゥッ!!!!!」


クロがナイトアーマーの隙を突いて自慢の牙で咬みつくが、なんと噛み砕くことが出来なかった。


「ッ!!」


このままでは振り回されてダメージを受けると思ったクロは瞬時に離れ、噛み砕くことを諦めた。


「マジか……じっくり時間がないとはいえ、クロが噛み砕けないってのは凄いな」


全く効果がないという訳ではなく、噛まれた箇所にはくっきりと歯形が残っている。

しかしその程度のダメージでは動くのに全く支障はない。


(元は人間でも、スケルトンになったらスタミナとか関係無しだからな)


スケルトンは本当にスタミナに限界が無い。

通常のスケルトンはそこまで速さがないが、現在アラッドとクロが対峙しているナイトアーマーはそれなりの速さを持っている。


(こんな奴に暗闇の中で追い掛け回されたりしたら……確かに超恐怖だろうな)


だが、現在は昼ごろ。

頼れる相棒が一緒に戦っているということもあり、アラッドはナイトアーマーに対して恐怖という感情は抱いていなかった。


「クロ、なるべく爪を中心に攻撃するんだ」


「ワフっ!!!!」


ナイトアーマーは身体強化だけではなく、腕力強化に防御力強化のスキルも有している。

魔力が底を尽けば発動出来なくなるが、それでも元の特徴に加えてスキルによる強化が加わり、かなりの難敵。


アラッドの個人的な評価としては、メタルリザードよりもナイトアーマーの方が上だった。


(こっちも強化系のスキルを使ったり魔力を纏って攻撃してるからダメージは通ってるんだけど……痛覚が無い相手ってのは強いな)


軽く骨が砕けないということもあり、動きを鈍くして大きな隙をつくるのが難しい。


そしてナイトアーマーは大剣技のスキルを習得しているので、剣技と同じスラッシュやバッシュを躊躇なく使ってアラッドとクロに猛攻を加える。


ただ、それでも動きの速さでは二人共負けていない。

そしてある程度ナイトアーマーの動きが読めてきたので、そろそろ本気で攻めに移ろうとしたとき……異変が起こった。

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