七十話 お迎え

フィリアスと喋りながら永遠とリバーシを行っていると、数人の騎士がアラッドたちの方にやって来た。


騎士の存在に気付いて一瞬笑顔になるが、直ぐに申し訳なさそうな表情になる。


(……美人揃いって感じだな)


フィリアスの護衛である女性騎士は全員が美女、美少女ばかり。

何故ここにいたのか、騎士たちと別れてからどういった経緯があってアラッドたちに会ったのかを伝えた。


すると騎士の一人が代表してアラッドの近くに寄って来た。


「君がアラッド殿でよろしいだろうか」


「はい、自分がアラッドです」


先程までフィリアスには頼まれたので普段の口調で話していたが、直ぐに敬語に戻した。


「お嬢様を見つけて頂き感謝する……よければ、家名を教えていただけないだろうか。是非礼をしたい」


周囲の者たちに素性がバレないようにフィリアスのことをお嬢様と呼んでいるが、本当は第三王女。

もし悪人に攫われたりすれば大問題に発展する。


護衛を担当していた騎士たちの首がいくつ飛ぶか分からない。

故に、それを未然に防いだアラッドに恩を返したいと思うのは必然だった。


「えっと……」


目線をアリサの方に向け、伝えても良いか否かを確認すると、グーサインで返された。


「パーシブルです」


「ッ!!!! パーシブル家のご子息でしたか。本日は本当にありがとうございました。アラッド様の賢明な判断のお陰でお嬢様を無事、お……屋敷に送りすることができます」


一瞬王城の「お」という言葉が漏れてしまったが、そこは敢えてスルーした。


「いえいえ、偶々視界に入っただけなので」


「それでも本当に感謝しています。お礼は必ず旦那様を通してお送りいたしますので」


「そ、そうですか……それでは有難く受け取ります」


ここまで何度も言われると断るのは申し訳ないと感じ、素直に礼の品を受け取ることにした。

そして最後にフィリアスと二言、三言交わしてから別れた。


「無事護衛の人たちが見つけてくれて良かったですね」


「そうね。でも、もし騎士の人たちがこの場所に来なかったらどうするつもりだったの?」


もしかしたらの可能性が頭に浮かび、アラッドは石の様に固まった。


(た、確かにそうだよな。騎士たちがフィリアスを見つけられなかった可能性だってあった……そうなったらいったいどうなんてたんだ? と、父さんに王城へ手紙を出せばだ、大丈夫だった……よな?)


侯爵家の当主であるフールからの手紙であれば、王城の者たちも後回しにはしない。


「と、父さんに頼んで手紙を書いてもらえば、大事にならずに事態を収束できたと思います」


「ふふ、さすがアラッドね。頭の回転の速さもずば抜けてるわ」


「あ、ありがとうございます……ただ、あいつが高貴過ぎる人だと知った時はこう……心臓が掴まれたような感覚でした」


アラッドの言葉に共感した騎士たちは何度も首を縦に振った。


おそらく貴族の令嬢だろうと思い、護衛か両親が見つかるまで一緒にいようかと考えていた。

だが、声を掛けてみれば第三王女だということが発覚。


なんて爆弾を背負い込んでしまったんだと若干後悔すらした。

騎士たちは迷子の令嬢に手を差し伸べるアラッドに尊敬の念を感じたが、その正体を知った途端……流れが悪くなれば自分たちの首が最悪飛ぶのではと思い、冷や汗が止まらなかった。


ちなみに、今回の件を護衛の騎士たちは上司に説明するので、お咎めなしにはならず厳しい訓練が待っている。

だが、王族に忠誠を誓った騎士として嘘の報告をするわけにはいかない。


「……私も正直なところ、かなり驚いたわ。言い方が少し悪いけど、可愛らしいモンスターに遭遇したと思ったら実はBランクやAランクモンスターだったって感じね」


「そ、それは恐ろしいですね」


だが、決してその表現は間違っていない。

襲って来るモンスターではないだけ安全な存在ではあるが、絶対に悪い流れには持っていけない存在だった。


「今回の件はやっぱり父さんに報告しないと駄目ですよね」


「そうね。お礼が届いたときに知れば、何でその時に教えてくれなかったんだと言われる筈よ」


「……報告する時、傍にいてください」


「ふふ。えぇ、勿論よ」


怒られるようなことは全くしていない。

しかしとんでもない報告をするのは間違いないので、傍に誰かがいないと勇気がでない。

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