六十一話 教えても良いのだが……
「それじゃあ、エリア。僕が留守の間頼んだよ」
「えぇ、お任せください。あなたが留守の間、この街は必ず守ってみせます」
「任せたよ。ルリナ、ガルアも僕がいない間にあまり無茶はしたら駄目だよ」
二人は十一歳になり、兵士二人とメイジ一人が同伴すればアラッドと同じくモンスターを狩ることができる。
偶にちょっと無茶をすると兵士たちから聞いてるので、フールとしては自分がいない間に何かあったらと思うと、少々不安になる。
「安心してください、お父様」
「父さんの言う通り、少し大人しくしてるよ」
「そう言ってくれると安心できるよ」
シルフィー、アッシュとの別れを済ませ、いざ王都へと出発。
「……改めて思いますけど、この箱の中凄いですね」
「ふふ、そうだろう。移動する際の箱に関してはかなりお金を使ったからね」
アラッドがリバーシや積み木でお金を稼ぐ前に造られた馬車の箱。
錬金術で造られた箱の中は外見よりも広くなっており、揺れもほとんどない。
そして気温は過ごし易い、二十度半ばに設定されている。
(いつかこういうマジックアイテムも造れるようになったら良いな)
錬金術のスキルを習得しているアラッドは成長すれば、是非とも自分の手で作ってみたいと思った。
だが、使われている素材も相当高価な物であり、錬金術の腕も高くなければ質の高い物は造れない。
アラッドが今まで稼いできた金額を考えれば、素材を集めるにはさほど苦労しない。
しかし……今入っている箱と同等の物を作るにはまだまだ錬金術の腕が足りない。
「そういえば父さん、結局鉱山はどうなっていましたか?」
「ふふ……知りたいかい?」
「知りたいです!」
その表情から既に結果は分かってしまったが、それでも一応知りたいと答える。
「結論から言うと、一度廃鉱になった鉱山から鉱石が発見された。つまり、鉱山は復活したということだね」
「おぉ~~~~~、それは超良い知らせですね!!」
「あぁ、本当に超良い知らせだよ」
精霊の気まぐれによる復活を待たずして、鉱山が復活。
領主であるフールにとってこの上なく嬉しいお知らせだった。
だが、鉱山が復活してやったーー!! では解決しない問題が残っている。
「でもね、アラッド。鉱山の中に入った騎士や兵士たちが皆口を揃えて言ったんだよ。何かに見られている気がする、ってね」
いかにもホラーな内容だが、精神年齢が既に大人であるアラッドはビビらない。
代わりにまだまだ子供であるドラングが肩を震わせてビビっていた。
「つまり、それは鉱山に住み着いた高ランクのモンスターがいる……ということですね」
「おそらくその可能性が高いと思っている。そうであれば、そのモンスターが鉱山を復活させてくれた可能性が高い。できれば仲良くしたいところなんだけど……アラッド、この前言った作戦は本気でやろうと思ってる?」
「鉱山を復活させるような高ランクのモンスターであれば、人の言葉を理解出来ると思うので、やってみる価値はあると思ってます」
「??? アラッド、いったいどんな方法でモンスターと仲良くなるつもりなの?」
アリサはまだ実の息子が考えたとんでもない方法を聞いていなかった。
「……って感じで仲良く、もとい懐柔しようと思ってます」
「ぶっ!! す、凄いわね……普通、そんなこと考え付かないわよ。でも、よくよく考えると、かなり納得できる内容ね」
いったいどんな方法なのか気になったリーナはアリサに尋ね、アラッドと同じく耳打ちで高ランクモンスターの懐柔方法を教えた。
「……な、なるほど、ね。確かにそれでなんとかなれば一番平和的な方法ね」
秘密の方法を聞き、心底驚いた表情をしながらもその方法に納得する。
「か、母さん! いったいどんな方法なんだ? 教えてよ!!」
「え、えっと……と、とにかく凄い方法ってところかしら?」
難しい内容ではないので、教えればドラングにも理解出来る。
ただ、その内容を聞けばアラッドを馬鹿にするのは容易に想像がつく。
そしてドラングの思考力ではアラッドの言葉でボコボコにされてしまう未来が見えたので、曖昧にしか説明できなかった。
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