四十三話 予定変更
「モンスターの種類は……二体ぐらいか」
「そんなことも分かるんっすね」
「これだけモンスターを狩っていたらなんとなく分かるようになる」
モッチたちはモンスターの声は聞こえたが、何種類のモンスターがいるかまでは分らなかった。
「現場に向かうのは構いませんが、到着したらどうするのですか?」
「……とりあえず観戦だな。モンスターどうしの戦いってそうそう観られるものじゃないだろ」
特別許可が降りてから何度もモンスターを狩るために森の中に入っているが、モンスター同士が戦っている場面は殆ど観たことがない。
「確かにそうっすね。それじゃぁ……戦いが終わったところを狙って、勝った方を狙う感じっすね」
「そうだな……偶にはそういう戦い方も悪くないな」
不意打ち、奇襲といった戦い方だが、野生では決して卑怯な戦い方ではない。
「おそらく獣系モンスターたちが戦ってる筈……足音と気配を消してくれ」
アラッドの合図で三人は指示通り足音と気配を消した。
到着した場所にはブラックウルフと四体のコボルトの上位種が戦っていた。
「あれはコボルトナイトが二体とファイターが一体……奥のはコボルトリーダーか」
「コボルトリーダーですか。なら、Cランクモンスターであるブラックウルフと対等に戦っているのに納得出来ます」
コボルトの上位種はランクD。
ランクCのブラックウルフを倒すなら十体ぐらいは数が必要になる。
仮に十体集めて戦ったとしても、全員が無事でいられる保証は無い。
ただ、上位種達が優勢な訳は他にも理由があった。
「あれ……もしかしたら、ブラックウルフは子供かもしれないっすね。体が以前見たことがある個体よりも小さいっす」
「そうなのか? なら、ジャイアントキリングが成立するかもしれないな」
このまま観ていれば、どちらかが倒れる……もしくは共倒れして漁夫の利を得られるかもしれない。
しかし、ここでアラッドは予定していた行動を変更した。
「やっぱり予定変更だ。あのブラックウルフを助ける」
「えっ? あっ、ちょ!!!!」
三人がアラッドの言葉を理解する前に飛び出し、まずは意識がブラックウルフにしか向いていなかったコボルトリーダーにジャンピングパンチをぶち込む。
「ガゥッ!!??」
横から思いっきり顔面を殴られたリーダーは吹っ飛び、顔の骨が砕けた。
「むっ、ちょっと手加減しすぎたか」
襲撃を受けたということは理解したが、どんな相手が自分たちを襲ってきたのかまでは把握していない。
即座に気配感知を使うと、己と仲間と戦っていたブラックウルフ以外に四つの気配を感知。
だが、その一体は既にリーダーの我前に迫っていた。
「ほいっと」
「ガッ……」
敵の存在を把握することは出来たが、抵抗する間も無くリーダーは鋼鉄の剛剣に斬り裂かれてしまった。
自分たちのリーダーの首を落とされたことで、上位種たちの意識は一気にブラックウルフからアラッドに向けられた。
身体強化に加え、脚力強化まで使用したアラッドの速度は上位種たちがあ想定していた速さを超えており、まずはファイターの首がリーダーと同じく斬り裂かれた。
「「グルゥアアアアッ!!!!」」
絶対に殺すという殺意を込めながらナイト二体は手に持つ剣に魔力を纏い、上段からバッシュを放った。
既に身体強化を使用しているため、生半可な斬撃ではない。
「おっと」
「「ッ!?」」
しかし二つの斬撃をアラッドも鋼鉄の剛剣に魔力を纏いながら受け止めた。
何かの間違いだと思い、そのまま押し込もうとするが全く動かない。
(コボルトの上位種でもこんなものか……剣圧も使ってこないし、もう手札はなさそうだな)
剣技スキルのレベルを上げることで鍔迫り合い時の腕力強化と、相手に威圧感を与える効果を持つスキル技、剣圧。
アラッドは既に習得しているが、コボルトナイトはまだ習得していなかった。
体格的にはアラッドが完全に劣っているが、鋼鉄の剛剣により腕力が上昇しているのであっさり押し返してしまう。
「これで、終わりだ!」
剣を弾き返されて直ぐには動けない状態を狙って剣を横に振り抜き、残り二体も同じく首を斬り裂かれて絶命した。
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