三十七話 ダンジョン産の一品
「アラッド様、ここがよろしいかと」
「おぉ~~~……立派な店だな」
メイジの男が勧める店へとやって来たアラッド。
店の警備員はアラッドが後ろに兵士二人とメイジ一人連れているのを見て、入店を断るような真似はしなかった。
どう考えても五歳児の子供が来るような店ではないが、護衛を連れて来るような子供はただの子供ではないと判断した。
「内装も凄いな」
「この街で一、二を争うマジックアイテムを売っている店です。アラッド様のご希望に合う品があるはずです」
アラッド様……その言葉を聞いた一人の店員が速足で店の奥へと消えていった。
「毒や麻痺を無効できる効果が付与されてるやつが欲しいな……さすがに学園で石化されることはないよな?」
「そ、そうですね。モンスターにそういった状態異常攻撃を使う個体もいますが、さすがに学生が用意できる武器に石化の効果が付与されていないかと」
「だよな……でも、やっぱり少し不安だな」
あり得ない……そう思う隙を突かれる可能性がある。
そう思ったアラッドは石化に対する無効化ができるマジックアイテムにも目を向ける。
「お客様、少しよろしいでしょうか」
「? はい、なんですか」
「この店の店長を務めるコレアットと申します。アラッド様のお話はお聞きしております」
パーシブル家始まって以来の麒麟児、五歳からモンスターを狩る許可を得た鬼才。
そういった噂がコレアットの耳に入っていた。
「本日はどの様な目的でのご来店でしょうか」
アラッドはパーシブル家の三男なので、特に政治的な目的で店を訪れた訳ではない。
ただ、店を預かる物として街を治める領主の令息に粗相を働くわけにはいかない。
「来年からギーラス義兄さんが学園に行くんだ。だから、万が一を考えて状態異常を無効できるマジックアイテムを渡そうを思って」
「なるほど、そういうことでしたか。であれば、いくつかお勧めの商品をご紹介しましょう」
「……そうですね。見せてください」
複数の考えが頭をよぎったが、ひとまず店長のコレアットが勧めるマジックアイテムを見ることにした。
「こちらの指輪、毒と麻痺を無効化するランク三の一品となります。隣の指輪は石化、そしてデバフを無効化できるランク三の一品です」
まずコレアットが紹介した商品は速攻でアラッドが欲しいと思う効果が付与されたマジックアイテムだった。
だが、コレアットが用意したマジックアイテムはこれだけではないので即決せずに話を聞く。
「こちらお二つで金貨七十枚です。そしてこちらもピアス、持ち主の意思に関係無く害意を含む攻撃が飛んできた時に結界を張ります。こちらの一品はランク五なの少々お高く、白金貨一枚と金貨三十枚します」
「……なるほど。でも、納得出来る一品だな」
フールから借りているモノクルがあるので、コレアットが紹介する道具が本物であることが解かる。
アラッドの護衛である者たちも紹介されるマジックアイテムを見てあまり表情には出ていないが、内心では大興奮していた。
(値段的にはどれも問題無い。ただ、毒や麻痺はこう……遠距離や近距離から仕掛けて食らうからピアスがあればなんとかなるだろうけど、石化やデバフは結界だけでなんとかならないよな?)
アラッドの考えは正しく、結界には防御出来る内容に限りがある。
攻撃を飛ばすのではなく、対象を直接狙った攻撃は結界で防ぐことができない。
「なぁ、他にこう……先に敵意や危機を察知できるマジックアイテムとかあるか」
「まずは元凶を察知するということですね。それなら、こちらの商品がお勧めです。色襲の警鈴です。これはダンジョン産のマジックアイテムになります」
「ダンジョン産のマジックアイテム……」
ダンジョンという異空間に繋がると扉を持つ存在。
そこには多くのモンスターが存在し、中には罠もあるのでダンジョンを探索する者を襲う存在が多い。
だが、ダンジョンの中には探索する者を誘惑する宝箱が存在する。
宝箱の中に入っている物はその時々によって違うが、中には一度の探索で一攫千金が獲得出来る場合もある。
故に、ダンジョンに夢を追い求めて探索する冒険者は多い。
「こちらは持ち主に危機が迫れば、頭の中に警鈴が鳴り響きます。そして頭に色でどういった襲撃が来るのか報告します」
「へぇ~~~~~……これはまた凄いな。でも、流石に高いんだろ」
「ランク五のマジックアイテムですが、効果が効果ですのでお値段は白金貨三枚と金貨三十枚になります」
貴族とはいえ、購入するかどうか迷う金額。
だが、アラッドの中で色襲の警鈴はすでに買うと決めていた。
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