十三話 冷静ではない相手に効く
ノーラスの解体ショーを見終えた後、再び丁度良いモンスターを探し始める。
「いや~~~~、にしても本当に圧勝だったっすね。まさかあんなに強いとは思ってなかったっす」
「俺もちょっと上手くいき過ぎて少し驚いた。ただ、三人とも俺が対人戦で糸を使い辛いって言った意味解かっただろ」
「えぇ、良く解かりました。スレッドサークル、でしたか。ああいったスキル技が多いのであれば、対人戦では十全に能力を発揮できませんね」
うっかり模擬戦中に殺してしまうのは遠慮したい。
今後決闘という戦いに挑む場合もあるだろう。
決闘であれば模擬戦と違って殺しても咎められることはない……ないが、殺さないことに越したことはない。
「ドラングとの模擬戦でもちょっと試してみようかと思ったが、やっぱり危ないなと思ったから使わなかった」
「……その判断で正解かと。今のドラング様にスレッドサークルを防ぐ手段はありません」
魔力を纏えるのであれば、首を切り裂かれずに済むかもしれない。
だが、ドラングの魔力操作レベルでは、まだ体に魔力を纏うことができない。
なので、スレッドサークルを使われたら首が綺麗に切り落とされてしまう。
「アラッド様、他にも何か凄い技があるっすか?」
「あぁ、庭で色々と試してみたが、攻撃系のスキル技はまだ他にもある。今日、それを全て使うか分からないけどな。ただ、この糸は攻撃よりも妨害に適している……スキル技を使わない場合を除いてな」
「そういえば、先程直ぐには糸が見えませんでした」
「そうだろ。だから突っ込んでくる相手をノーモーションで引っかけることも出来る」
これが何気に戦いでは使えるのではとアラッドは考えていた。
「そう、ですね。接近戦メインの者と戦う時は有利な妨害かと」
「そうだろそうだろ。今度ドラングがまた模擬戦を挑んできたら、開始早々転ばそうと思うんだ」
アラッドがドラングに糸による妨害を仕掛け、それに引っ掛かるドラングの姿が容易に思い浮かんでしまった三人は自然と苦笑いを浮かべた。
「ど、ドラング様は直線的な方っすからね。そういった相手にはより効きやすそうっすね」
「あいつはそういった妨害系に疎そうだしな」
ドラング疎いのではなく、アラッドが知り過ぎているのだ。
「それに……近づいて来ようとしない相手の妨害方法も考えている」
「えっ、そうなのですか?」
メイジであるユーナはバリバリ後衛職なので、アラッドが思い付いた方法に少々恐れを感じた。
「さて、次の相手が見つかったみたいだな……これまた可愛らしいが」
アラッドの前に現れたモンスターはスライム。
数は二体だが、動きは遅い。
しかし成長した個体であれば体内の酸を吹き出すことも出来るので、ホーンラビットと同じくあまり侮っていい相手ではない。
「今回も手を出さなくていい」
アラッドを餌だど認識した二体はのっそりのっそりと近づくが、二体がアラッドに近づくよりも速くアラッドの指から二本の糸が放出された。
その糸には魔力が纏われており、スライムの体内に侵入しても溶かされない。
そしてその糸はモンスターの第二の心臓である魔石に巻き付く。
「よっと」
指で糸を引くと、魔石はスライムの体内から引き抜かれた。
体から魔石を抜かれたスライムは意識を失い、その場に崩れ落ちた。
「どうよ」
「み、見事な手際です。今回は純粋に糸に魔力を纏い、魔石に巻き付けて引き抜いた……という内容ですね」
「スライムの中は倒すまで酸だからな。普通に侵入しようとしても溶かされると思ったんだ」
溶かされない為に糸に魔力を纏わせた。
その理屈はユーナも解る。だが、その糸に魔力を纏わせた技量を見て固まってしまった。
(……ま、魔力操作が得意というのは話を聞いていて知っていましたが、まさかここまで無駄なく操るとは……)
アラッドは糸に纏う部分と量を最小限に留め、魔石を抜き取った。
効率よく倒したことで、まだまだアラッドの魔力は余裕があった。
「まだまだ倒すぞ」
日はまだ高く、屋敷に戻らなければならない時間までたっぷり余裕があるので、アラッドのモンスター討伐は夕方になるまで続いた。
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