第68話 いざ出陣!
WoZのギルドハウスを見下ろす丘に赤色の
三オンの
「──イヤな時間を設定してきたなぁ、まったく」
真紅の甲冑を
【小覇王】の部曲長、名前は
三オンでは珍しい、女性プレイヤーが多く所属している部曲のリーダーとしても有名である。
三大VRMMO融合事件後、動揺する部曲員たちをまとめ上げ、とりあえず本拠地を確保しようと、あの家に目をつけた。一応、事前の偵察で、家の規模の割には出入りするプレイヤーが少ないとのことだった。
「揃ったのは半分くらい?」
その問いかけに、隣に馬を立たせている女性兵士が応じる。
「ええ、あと何人かは後からでも入ってくるかもしれないけど、期待しない方がいいと思う」
ログインできないプレイヤーたちのキャラクターは、部曲の
今回、T.S.Oの世界に飛ばされた三オンのプレイヤーたちについては、他の二つのゲームと同様、レベルや所属を問わず、全員がゲーム内に出現している。ただ、幸いだったのが、数ヶ月前に運営会社によってキャラクターデータベースの最適化処理が行われ、一定期間以上活動していなかった部曲やキャラクターのデータがゲームから切り離されていたことだった。そのため、今、T.S.O.内で活動している三オンプレイヤーたちのログイン率は高くなっている。
それでも、誰もログインしていない状態で放置されている部曲もいくつかは存在したりしていた。そういう場合は、近くで活動していた部曲が【
覇鈴も、そういったいくつかの放置部曲を保護している。
「ただ、さすがにこの状態を続けるのは厳しいっすよ」
さっき、補給部隊や捕虜の後衛部隊を護衛している女兵士の一人から言われたばかりだった。
それでなくても、部曲【小覇王】には女性プレイヤーが多い。間違っても、個人情報の流出につながる事態になってはいけない。
そんな中、三オンプレイヤーのコミュニティ経由で流れてきた解決策の一つが、T.S.O.プレイヤーのギルドハウス奪取だった。
「あそこのプレイヤーたちにはちょっと悪いけどね」
隣に立つ女性兵士の呟きに、覇鈴が吐き捨てた。
「そもそも、今回の件だってT.S.O.プレイヤーのせいなんだからさ。それに、アイツら
そう言いつつも、内心では無益な
先日の、三オンプレイヤーキャラクターによるT.S.O.プレイヤーキャラクターの殺害事件、その影響で流出した一人の高校生の情報がネット上に拡散され、一部の人々の
これは覇鈴だけではなく、他の三オンプレイヤーのほとんどに共通する意識でもあった。
実際に起きた殺害事件が、逆に抑止力となっていたのだ。
手先でウィンドウを表示させて時間を確認する。
攻城戦開始まで十分を切った。
「アンタたち、準備はイイかい? アイツら……敵は、まだこちらの戦い方や攻城戦のノウハウを知らないはずだからね、とにかく速攻で落とすよ!」
覇鈴が
五人編成のパーティが十編成、余った二人が覇鈴の
「
その報告に頷いてから、覇鈴は高々と槍を掲げた。
「よーし! 最初は騎兵隊で、相手の門へ突撃、先手必勝で流れを取る! 敵が姿を見せたら、遠距離部隊も攻撃開始だ、指揮はそれぞれの部隊長に任せる! 騎兵隊は全員私に続け! 相手は少数、一点集中でいくよっ!」
味方の返事を待たずに、部曲旗を掲げた副官NPC一人を引き連れて馬で駆け出す覇鈴。
──こうして、WoZのギルドハウスを巡る攻城戦が開始された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます