第15話 コミュニケーション
得意げな調子で【三オン】でのエピソードを語り出すベンジャミン。
僕はさりげなくガウへと視線を向けて、それとなく訴えかけるが、ガウは気づいているのかいないのか、ベンジャミンの熱弁をクールにスルーしてカツカレーの攻略に専念しているようだ。
そこへ食事を調達してきた
「なんか話が盛り上がってるわね……それにしても打ち解けるの早くない?」
「そうね……留学生と聞いて身構えていた私が、ちょっと恥ずかしいくらい」
そんな常盤さんに対して優しげな笑みを向けるガウ。
「それは僕も同じかな、正直、同じ留学生とはいえベンジャミンとは国も違うし、実を言うと初対面までは緊張してたんだよ。でも、最初っからこんなカンジで肩すかしを食らったというか」
「んんー、でもそれだけじゃ、ないんデスよね」
ベンジャミンが少しだけ姿勢を正した。
「最初の日、カヅキが普通に昼食に誘ってくれたこと、そして、一緒にいたワタルも、なんというか、無理をしていない自然な雰囲気ミタイな?」
表現に困ったという風に顔を向けるベンジャミンの言葉をガウが引き継いだ。
「言いたいことはわかるよ、どちらかというと常盤さんの反応が正しいんだ。良いとか悪いとかの問題じゃなくて。逆に僕たちもそういう反応には慣れているし。そこから距離感をどう狭めていくかって流れになるんだけど」
水を一口飲んでから、言葉を選ぶようにゆっくりと口を開く。
「それが、九重さんも航も、最初っから普通に適度な距離感だったというか。なので、こちらも何も考えずに、あっさりと受け入れることができちゃったみたいな」
照れたような笑顔を見せるガウ、ていうか、なんか近くのテーブルの女の子たちがざわついてるんだが。
それ以前に、そういう言い方されるとこっちも照れちゃうじゃないか。そもそもそんな大それたこと意識すらしていなかったんだが……
「あー、そういうことかー」
口へ運ぼうとしていたパスタをいったん皿に戻す花月。あ、いや、この状況で普通に食べながら話を聞いていたのか。
「たぶん、リーフくんのおかげかな。航とわたしのもう一人の幼なじみ。事情があってご近所さんになったんだけど、最初は
「……褒められてるんだよね、たぶん」
あ、ガウの笑みが少しだけ引きつってる気がする。
「ははは、まあ、それもあるんだけど、僕、T.S.O.でギルドリーダーやってて、いろんな人と付き合いがあるから、慣れてるだけだとも思うよ」
僕のフォローで、微妙になりかけた空気を元に戻す。
さらに常盤さんも話に乗ってくれた。
「そうね、昨日、はじめて紹介してもらったけど、いい人ばかりだったわ。雰囲気も良かったし、あのチームのリーダーとして中心にいるってことは素直にすごいことだと思う」
うわ、ちょっと待って、面と向かってそんなこと言われたらさすがに照れる。
「一つ気になったのは、女性のプレイヤーが多かったことかしら。中学生から社会人まで年齢層も幅広いみたいだし、北斗くんへの認識も改めなきゃと思ったわ」
「え?」
ガタンと音を立てて、ベンジャミンが椅子から立ち上がる。
「ワタル、その話、詳しく」
「ちょ、なんか口調がいつもと違う、しかも目が笑ってない」
「イイからキリキリ話す。
そのベンジャミンの剣幕に圧されて、反射的に腰を浮かしたタイミングだった。胸ポケットに入れている携帯端末が振動した。
「あ、メールだ」
「私もみたい」
これ幸いと、ベンジャミンを片手で制して携帯端末を取り出そうとする。
同時に花月と常盤さんも食事を中断して、端末を確認する。
そして、いったん顔を見合わせた後、こちらに視線を向けてきた。
「航、たぶん、同じメールが行ってる。サファイアさんから……」
さすがに空気を読んだのか、ベンジャミンも座り直して食事を再開する。もっとも「コレがリア充とかいうヤツですか」とか複雑な表情で呟いていたのも気になったけど、今はそれどころではない。
[大変な事態になりました。詳細は直接お話しします。二十時にギルドハウスへ集まってください。ご都合もあるとは思いますが、可能ならこちらを優先していただきたく思います]
「……ラピスちゃんのことかな」
不安そうに俯く花月の肩に、常盤さんがそっと手を乗せる。
「とりあえず返事してみる」
気を遣って、僕の分の食器も持って席を立つガウとベンジャミンに、軽く頭を下げて謝意を伝えつつ、今晩の参加が大丈夫なことと、できれば詳細を教えて欲しいとメールへ返信する。
だが、返事は来なかった。
不安と
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