第14話 留学生二人とVRMMO
「昨日はあまり力になれなくてゴメン」
翌日の昼、学食で合流してきた花月が両手を合わせて謝ってきた。
花月と一緒にきた常盤さんも
「私も……その、入ったばかりで状況がわからないし、あまり口を出すべきではないとも思って……」
「あ、いや、それは!」
僕は慌てて手を振る。
「っていうか、
「そうよ!
花月が僕の顔を容赦なく押して割り込んでくる、つか、痛いです。
「ありがとう」
さすがに苦笑する
「私も新参だからできることも限られるけど、協力できることがあったら遠慮無く言ってね」
「う、うん。とりあえずアオに常盤さんのことは伝えてあるから」
「あ、ありがとう……まあ、それは優先順位が高いっていう訳ではないから、急がなくても大丈夫……」
なんか気になる反応。居心地が悪くなると言うかなんというか。
「ねー、ユーたちだけで盛り上がってるけど、なんの話なのかなー」
テーブルの反対側から巨大なエビの天ぷらをのせた蕎麦をすすりながら声をかけてくるベンジャミン。
感情を素直に出してしまう
「あ、ゴメンゴメン、ゲームの話。昨日から常盤さんもT.S.O.はじめてさ」
この話をきっかけに、花月と常盤さんは注文のためにカウンターへと向かい、僕も中断していた昼食を再開する。日替わり定食の生姜焼きが少し冷めてしまったか。
「ワタルたちはT.S.Oプレイヤーでしたか」
「ベンジャミンたちは何かやってるの?」
僕が問いかけると、エビ天と格闘を始めたベンジャミンに代わってガウが答える。
ちなみにガウが食べているのは特大カツカレー、なんというか二人ともイメージと違うような。
「【
「そうなんだ、確か戦争モノだよね。昔の中国の
「うん、そう。航も三国志に詳しかったりする?」
「まあね、マンガとかアニメからの知識だけど」
「オゥ! マンガ、アニメ、日本が誇る素晴らしい文化デスね!」
ガウとの会話に突然割り込んでくるベンジャミン。
ある意味日本より宇宙開発研究が進んでいるアメリカから、わざわざ日本に留学してきたことが不思議だったけど、たぶんこれが答えなのだろう。
熱く語りはじめるアメリカ人の言葉を聞き流しながら、ガウとの会話を思い返す。
ディールクルム社が提供する高性能サーバ群とネットワーク直結型の
──余談ではあるが、特に明言されている訳ではないけど、この学園でもこれらのゲームプレイは肯定的に捉えられている。宇宙でのさまざまな作業に同じヘッドマウントディスプレイを使用することが多く、操作の習熟につながるという理由からだ、もちろん学業に影響しない範囲でという前提はあるが。
話を元に戻す。
一つは僕たちがプレイしている【トルネリア・サーガ・オンライン】、通称【T.S.O.】、開発会社はノースリード社。コンピュータゲーム
次いで国内でプレイヤー数が多いのが【
そして、最後のタイトルが、ベンジャミンとガウがプレイしているという【
「というか、ガウはわかるとして、ベンジャミンはT.S.O.の方が好みなんじゃないかと思ってた。それかH.B.O.をやってたとばかり。三オンは一番キャラから離れてる気がするなー」
などといいながら、中国風の
「チッチッ、人間を外見だけで判断するのは日本人の悪いクセデースね。ワタシ、こう見えて三国志大好きデスよ、カワイイ女の子武将たちを率いて戦う感動のストーリー! 戦争の中で育まれる敵武将との禁断の恋! もう、サイコー!!」
ちょっと待て、それは僕が知っている三国志となんか違う。
さすがにガウも苦笑を隠せない。
「こう見えてもベンジャミンはすごいんだよ、ゲームの中で結構頼りにされていて、この前の戦争イベントでは千人近いプレイヤーの指揮をして、五倍の敵から拠点を守り抜いて
軍神ベンジャミン……なんか、すごい。でも、これ以上この話は広げない方がいい気がしてきた。
「そういえば、三国志ってことは国が分かれてるんでしょ?
「ううん、魏の軍団に所属してる、ベンジャミンも一緒。日本サーバだと蜀のプレイヤーが圧倒的に多くて、魏が半分くらいなんだよね。正直、いつも厳しいけど、だからこそ達成感も大きいかも」
ちなみにガウ曰く、呉所属のプレイヤーも多いそうで、相対的に圧倒的少数派になってしまう魏のプレイヤーたちは逆に団結が強いとのこと。
「だからこそ、ベンジャミンの活躍というか存在が際立つんだろうね」
ガウの言葉に、ドヤ顔で胸を反らすベンジャミン。
しまった、話をそらすつもりで戻してしまった。
エビの天ぷらを完食して満足したのか、得意げな様子でガウが武勇伝を再開する──
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