第95話

「あとパット、おしりふき、使い捨ておねしょシーツ……このあたりですかね……」

「これは大変だ。オムツだけ持って行けば事足りるわけじゃないのか……」

 社長が目を丸くしている。

「旅行の時にはオムツの枚数は増えますが、おむつもおしりふきも、使用済みオムツを入れる袋も、このあたりのものは普段の外出でみんな持ち歩いてますよ。マザーズバックって、大きな袋を持っているでしょう?あとはミルク関係が一番かさばりますね。……今は液体ミルクという便利なものが出て、出先では助かるようになったみたいですけど。それでも旅行となると、毎回液体ミルクは使わない人もいるでしょうね。出先でいつも入手できるわけではないですし、いつもと違うミルクを飲むと便秘になる赤ちゃんもいるし、そもそも飲めない子もいるはずですから」

 ミルク缶、スティックミルク、固形ミルク、液体ミルク。お湯を持ち歩く水筒に、湯冷ましを持ち歩く水筒。哺乳瓶。口元をぬぐう清潔なガーゼのハンカチ。……ああ、懐かしい。

「朝、ミルクを飲ませて外出して、夕方に家に戻るときでも、出先で2~3回授乳する必要があって、ミルクを飲ませるとすると、最低でもこれくらいのものが必要でしょう。1泊2日だと……」

「想像以上にすごい荷物だな……」

 社長が唖然としている。

 うん。液体ミルクの認可はみなが本当に待ちに待ったと思う。知らない人からすれば大げさなっていうくらい。母乳で育てられれば必要ないから母乳で育てればいいだろうというような無責任な言葉にも阻まれたりしたみたいだけど……。

「ホテルは最低限液体ミルクは置いてほしいです。できれば小分けで使えるスティックミルクや固形ミルクが置いてあるといいですね。あと水。ミルク用には大人が飲むミネラルウォーターだとだめなんです。赤ちゃんに害があるので……」

 新生児が過剰にミネラルを摂取するとダメだという話は聞いたけれど詳しい話は分からなくて、とりあえず赤ちゃん用の水、ミルク用の水って書いてあるのなら大丈夫だろうと思っていたけれど。

 それから先も、私の話を興味深い顔をして社長は聞いていた。

 いろいろ、懐かしいと思い、新しい物を見つけて感心し、ついつい、私も楽しんでしまった。

 ベビー服を見て、社長がそのいくつかを手に取った。

「小さいな」

 ロンパースだから、本当に小さな赤ちゃん用だ。

「そうですね。小さくてかわいくて、ついつい、いっぱい買っちゃいたくなりますよね」

「芋虫か、これは?こっちは蝶だ。羽がついてる。これは新幹線か?ああ、こっちもかわいいな。これも捨てがたい」

 社長に何かのスイッチが入ったようです。



=============

下書き〇話ってあったので……予約してあると勘違いしてました!更新間が空いてしまった!引き続きよろしくお願いします!ぺこぺこ。

レビュー、いいね、感想、コメント、SNSなどで読んだ報告などありがとうございます!励みになります!ちょっとかわいい感じの社長が好きです。俺様は苦手です。同志求む!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る