第78話

「最後までお付き合いいただきありがとうございました。今日の生放送はこれでおしまいです」

 ちらりと時計を見ると、予定通りの10時少し前。あっというまの2時間弱だった……。まぁ途中でコロッケを揚げるとかバタバタとしていたからというのもあるだろうけれど……。

 10時にきっちり生放送は終わるというのは優斗が決めた。

 他のVtuberは24時間生放送だのいろいろなことをしているらしいけれど。生放送を見たいのに見られない人がいないように……高校生でも夜更かしせずに見ることができるようにということらしい。まぁ、放送してる優斗が高校生なのだから、もし24時間生放送といっても、絶対許さないんだけどね。協力もしないし。

「新曲動画はまた改めてアップします。ぜひ聞いてください。それでは、皆さん夜更かしせずに寝てくださいね。睡眠は大事ですから。おやすみなさい。良い夢を」

 優斗が回線をオフにしたとたんに、私の顔を見た。

「か、母さん……コメント見てくれる?」

 え?

 動画はもう流れていないけれどコメントは動いている。

「なんで?」

 優斗が小さくしていた画面を広げた。

「歌の……その、あー、僕の作った歌のコメント、怖くて見られないっ」

 か、かわいい!優斗が、かわいい!お母さんお願い!なんてかわいい過ぎる。

 ちゃっちゃかPC捜査していつの間にかVtuberのキャラ作って、器用に動かして、台本も用意して、歌も作って……すごいと思っても、そうだよね。どんな評価されるかって……。見るの、確かに怖いかもね。

 ……あんなにいい歌なのに、酷評されてたら……。されてたら……。

 やばい、私もコメント見るのが怖くなってきた。優斗のことを悪く言う人間がいたら許せないし、私の歌い方が悪くて良さが伝わらなかったと思うとショックだし、あああ、怖い!

 ううん、怖いなんて言ってる場合じゃなくて、私が優斗を守らなくちゃ。

 意を決してコメントを見る。

「あ……」

 過去のコメントをさかのぼって、歌を歌い始めたあたりの部分から読んでいく。

「……ゆ、優斗……」

 やばい。泣きそうだ。

 いや、泣いちゃったよ。涙腺緩いんだよ……。

「か、母さん、な、そんなに批判があった?」

 優斗がオロオロとして青ざめている。

 違う……違うよ、優斗……。みんなが優斗の作った曲を褒めてくれてて……それが、嬉しくて……。

 子供が褒められるの、自分が褒められる以上に嬉しい。いや、嬉しいなんて言葉じゃなくて、なんていうの……。

 泣けちゃう。いろんな思いが胸に溢れて。感激、感動、感謝……そう、感涙の涙ってこういう説明しがたい涙なんだと思う。うれし涙に近いけど、嬉しいだけじゃなくて……。

「もう、優斗、自分で……見なさい!」

 優斗の背中をポンっと叩いて部屋を出る。ドアを閉めると、部屋から優斗の叫び声が聞こえてきた。

「うわー!マジか!やった!」

 よかったね。優斗。

 本当にいい曲だったもの。

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