第77話

「麦チョコジャガ丸?」

「ジャガ麦チョコ丸?」

「新しいお菓子爆誕!」

「爆弾麦チョコ」

「wwwww」

 コメント欄が盛り上がっているのを眺めながら、優斗が二つに割って撮影に使った麦チョコ入りのコロッケを口に放り込んだ。

 もぐもぐと咀嚼しながら、私の顔をちらっと見て、親指を立てる。

 美味しかったのかな?それはよかった。

 それとも、コメントが盛り上がっている……SNSのほうも麦チョコをコロッケに入れるということが話題になって、生放送を視聴者が少しずつ増えている。……成功成功という意味での親指だろうか。

 どちらにしても、優斗が満足げな顔をしているのでよしとしよう。

 台本に視線を落とす。

「それでは、次はオリジナルの曲を披露します。作詞作曲ユト」

 優斗はユトという名前で音楽を発表するのか。本名を推測されそうな名前で大丈夫なのかな?それは私が優斗の名前を知っているからそう思うだけ?最近有名な人でEDOとかいるし、そっち系っぽいって思われておしまいかな。

 優斗と何度かリハーサルをした。

 優斗の作った歌。前半は機械っぽいエフェクトをPCでつけて、後半はエコーだけになる。昔風に言えばアンドロイドが人間になる……いや、童話にもあったなぁ。木の人形ピノキオが本物の人間になる。あ、妖怪が人間になりたいっていうのもあったか。って、古いよね。人間ならざる者が人間にあこがれて人間になるっていうのは、よくある話なんだね。まぁ、そういう系の歌詞なので、前半は機械っぽい声になるように。後半が人間になったと思わせるような、そんな演出。

 両手を祈るような形で組んでその間にマイクを持つ。

 ああ、どうか、優斗の作った曲の評判がよいものでありますように。好意的なコメントが付きますように。

 優斗が傷つくようなことになりませんように。

 いい歌なんだ。だから、だから……そのよさが皆にも届きますように……。

 優斗がPCを操作して音楽を流す。

 覚えるために何度も聞いたイントロ。マイクを手にとり、歌い始める。

 声にエフェクトがかかって、不思議な声に変わる。私の声でありつつ、機械っぽさがある声。

 そうして、次第に機械から人間へ。感情を強く、強く押し出し……。

 1曲歌い終わる。優斗の作った曲がどうか、評価されますように。

 どんなコメントが届いているのかPC画面を見ようと思ったのに、なぜか優斗は画面を小さくしてしまっている。

 ああ、音楽のアプリが大きく映っているから、そちらの操作をするために小さくしたのかな?コメントが見えないよ。

 優斗が台本、台本と身振りで示す。

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