第74話
「優斗、じゃぁ、その、アドリブとかでうっかり年寄り臭いこと言っても平気なのかな?」
「誹謗中傷とか個人情報漏らさなきゃ大丈夫だよ」
「それは分かってるわよ。名前、住所、電話番号、それからえーっとメルアドとかそういうのでしょ?」
「それだけじゃないよ。仕事の話や家族の話、出身校、利用駅の名前や普段よく行く場所とか店の名前とか住んでるところが推測できるような情報もダメ!」
そうなんだ。いや、そうか。SNSとかでもストーカー被害を防ぐためにとかワイドショーとかでやってたりもするもんね。お昼休みに休憩室でテレビを見ていて少し目にしたことがあったような。アイドルが、目に写真を撮影している相手の顔が映っていてそこから恋人の存在がばれたとかいう話もあったような?それくらいちょっとしたヒントでもいろいろなことを調べる人がいるから気をつけろということだよね。
「気を付けます……」
「うん。動画はこっちでチェックしてるから問題ないけど、生放送のアドリブ部分だけは本当、気を付けて」
「はい」
なんだか本当にお兄ちゃんみたいだ。……もし、妹か弟がいれば、いいお兄ちゃんになったんだろうなぁ。
「でも、年寄り臭いことっていうか、35歳キャラなんだし、むしろ年相応のこと言って喜ぶ人とか多いと思うんだけどな。子供のころはやっていた遊びとか」
そう?
「じゃぁ、10回クイズとか始めたりしてもついてきてくれるかな?」
「は?何それ?」
そうか、そうか。優斗は知らないか。
「あ、母さん、そろそろ曲が終わるからスタンバイ。えーっと、コロッケの写真を時々挿入しながらで、ああ、手間取ってるときは、アドリブでつないでね!」
ちょ、いきなりハードル上げないでよっ!
だ、台本台本。
曲が終わったら、曲名ね。それからコロッケの画像が流れてそれを見ながら……。
「お届けした曲は、――でした。えーっと、コロッケ、揚げてきました。写真……」
画面が写真の映像に切り替わらない。優斗がパソコンに向かって作業してる。えっと、アドリブ、アドリブ。
「しゃ、写真の用意ができるまで、アドリブ……あ、いや、そのじゅ、10回クイズをしましょう!」
どうしたらいいのっ。
コメントは……。
「焦ってるかわいい」
「アドリブって言っちゃったwww」
「春たんがんばれ」
「10回クイズ!懐かしい!」
反応は、大丈夫そう。
「10回かわいいって言って」
「かわいい、かわいい、かわいい、かわいい、かわいい、かわいい、かわいい、かわいい、かわいい、かわいい」
「ありがとう」
「ありがとう」
「ありがとう」
ふふ。そういうやり取りもあったよね。
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懐かしい……
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