第57話
「何その、上官の命令に逆らえずに困っている下級兵のような反応……」
え?違うよ、山崎さんと一緒に飲みに行けるのが嬉しくて緊張しちゃっただけだよ。
「ハマーソだと思ってない?私そこまで怖い?」
ん?ハマーソ?たしかなんかのキャラクターの名前だよね。
「あ、分かりました?いえ、山崎さんは怖いんじゃなくて、ハマーソ様みたいに美しき上官のような……」
「はいはい。でもまぁ、面白かった」
二人が、アニメの話で盛り上がりだした。
「アニメとか漫画ってあんまり興味なかったけれど、面白いものね。またおすすめあったら教えてくれる?とはいっても、あんまり会社でできる話じゃないし、ちょうどいいわ。飲みに行ったときにでも話そう。で、深山いつ行く?あー、優斗君に話しないといけないか。lineeで連絡してくれればいいや。後藤も都合の悪い日はあらかじめ教えておいて。店は、私が探しておくよ。あ、後藤は飲む方だっけ?飲むなら車じゃない方がいいのかな?」
と、話が続きそうなところで課長が部屋に入ってきた。
「おはようー、」
時計を見ると始業時間2分前。
山崎さんが席をたち、課長のお茶の準備を始める。
今時女子社員にお茶の用意をさせるなんて!と、山崎さんは言いそうだ。いや、実際に平等にお茶係をしましょうって提案もしていた。けれど、最終的に……。
「あいつら何度言っても、お茶の葉を急須に引っ付けたまま洗ったっていいはるし、トイレに行って手をちょいちょいと水で濡らしただけで洗ったと言って人のカップ触るし、布巾で流しもカップも机の上もどこも同じように拭くし、もう絶対無理!無理!無理!」
と、あまりの衛生観念のいい加減さに挫折した。確かにねぇ。なんか一部の男性社員は……時々優斗と同じように見えることがある。
食べる前に手を洗いなさい!洗った手を服でぬぐわないの!下に落ちたものを拾って食べない!って、心の中で思わずつぶやいたことあったなぁ。しょうがないなぁとほほえましく見ているわけにもいかないよね。
ちなみに、お茶は飲みたいときに各自飲むのが基本ではあるけれど、課長へのお茶出しは、お茶菓子を課長は皆にも色々と買ってきてくれるので続けている。
「深山さんここの好きだったろ?」
ニコニコと笑って、課長がお茶菓子の箱を私に見せた。
「はい、ありがとうございます」
くるみの店のクッキーの箱!席を立って箱を受け取り、皆の机の上に配っていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます