第45話
ああでも、この間の会議で本当なら施工会社を決めて、そこから先の話を進めていく予定だったんですもんね。これで、設計からなにからいろいろやり直しとなれば、工期やらオープンやら全部いろいろ予定が変わっていってしまうし、なるべく急いでファミリーの旅行について学びたいんですね。いろいろ社員が提案したとしても、最終判断するべき社長が何も知らないのでは困ると思ってのことかな。
「分かりました。来週1週間は、東御社長に私でよければいろいろ教えます。参考になりそうな場所もピックアップしておきます。えーっと、スケジュールはこちらで組んでも?」
「ええ、もちろん。ありがとうございます。深山さんと二人でいろいろ出かけることができるなんて、夢のような1週間になりそうです」
はい?なんで、そんなとろけるような笑顔を私に向けるんでしょうね?
セクハラ疑惑で怒っていた人と同一人物に見えない顔しています。
それに、私と二人で出かけるのが本当にうれしそうな顔されても……。
それが、いつもの普通の東御社長の顔だと言われても、普段を知らないので特別な表情に見えて仕方がない。
ああ、もうこの人、かっこいいだけじゃなくて、天然のタラシだ。女性を引き付ける行動を無意識にしちゃう系のタラシにちがいない。
勘違いした女性からアプローチされて、それで……無自覚だから一方的にアプローチされてると思い込んで……。女性嫌いになるほど嫌な思いもして。
きっと、とっても大変なんだろうなぁ。まぁ、私は勘違いしたりしませんけどね。
だって、妹の茉莉さんの話やセクハラに対して厳しいことや、それから仕事に対する誠実な姿勢や、ちゃんと人の話を聞けることから考えると「人妻に手を出そう」ってそんな不誠実な行動をするはずがない。
「あの、それでは月曜日なんですが、どこへ出かけるかはまだ考えていませんけれど、服装はラフにお願いします」
スーツ姿では、乳幼児のお世話は不向きだ。私もヒールは封印したほうがいいかもしれない。かかとなしの靴。服は……まぁ実際子供を連れているわけではないけれど、動きやすくて汚れてもいい、少しラフなものにした方がいい。
「え?ラフ……スーツではなく……?」
東御社長がびっくりした顔をしている。
ん?それほど驚く要求をしたつもりはないけれど。
「あの、小さな子供を連れていくような場所ではスーツ姿の人はあまりいないので……目立つというか、その、時には服が汚れてしまうようなことも……」
東御社長がハッとする。
「そうか、そういえばビジネス客でなければスーツを着て旅行する人も見ないな。子供と一緒に行動する場所にスーツはないのか……。いや、その、普段はスーツ姿でばかりなので、ラフな服装と言われて、何を着ればいいのか……さすがに、家にいるときのあの恰好では……」
普段はスーツ姿ばかり?仕事中はということかな。
「休日の外に出るときの恰好で構いませんよ?」
「あー、休日の……服装……いや、うん、まあ来週までに何とか茉莉にでも相談してそろえておくよ」
ん?
まさか、休日返上で働いてる仕事の虫で、スーツ以外本当にほぼ服を持っていないとか?いや、スーツ以外の服も、スラックスはいて、ワイシャツがカラーシャツになったくらいのわりとかっちりした服装なのかな?
何を着ても似合いそうなんだけどなぁ。
うちの息子はオタク属性だからあんまりファッションにこだわりはないけれど、東御社長のような何でも着こなせそうな人でもファッションには興味ないのかな?
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オタクなんで……w
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