第21話

★更新予約ミスって更新されてなかった部分です。後ろ2話が先に公開されていました。申し訳ありません★

===========================


「うん、分かった。それなら母さん、頑張って人気の曲を覚えて歌えるようにする」

 今までは、なかなか新しい曲が覚えられなくて、カラオケでも20年くらい前の懐かしめの曲を中心に歌ってたもんね。

「あー、それはやらなくていい」

「え?」

「だから、個性を出すためにさ、アラフォーキャラにしたんだから」

「はい?」

「他のVTuberと、差別化するために、アラフォーって設定にした。で、歌ってみたも、懐かしい曲にしたらさ、そういう曲のファンが食いついた」

「ん?歌ってみたって、誰が?」

「ご、ご、ごめんなさいっ!実はカラオケ行ったときに、母さんの歌声こっそり録音して、すでに……歌ってみた動画を何本か……」

 なんですって!

「優斗っ!あんたって子は……!」

 はーって大きなため息が出た。

「ごめんなさい、母さん……怒った?」

 首を横に振る。

 ほっとした。

「怒ってない……。やけに、私とカラオケ行きたがるから、男子高校生って、友達とカラオケ行くもんだと思ってたから……もしかして優斗にはカラオケ一緒に行ける友達がいないのかと、心配して……損した」

 カチャンと小さな音を立てて優斗がスプーンを皿において手を止めた。

「ごめん……心配させて……」

「いいよ。うん、そっか。いやー、まさか、カラオケ、録音されてたなんて……だったらもっと気合入れて歌ったのに」

「十分上手だったよ!」

「いやいや、やるからにはもっと気合をいれて歌う。懐かしい曲、優斗も知らないようなマイナーな曲でもいいなら、歌いこんだ自信曲もあるからね?」

 ぽんっと、優斗の頭に手を伸ばして軽く叩く。

「何か、母さんに頼みごとがあるなら、遠慮せずに言いなさい……ね?」

 これから、言えないことも増えてくるかもしれないけれど。

 私への頼み事まで内緒にする必要はない。

「あー、うん……いや、でもなぁ、頼んで何とかなるもんでもなぁ……」

「ん?何?何か頼みたいことあるの?」

「いや、何でもない!ごちそう様。あ、今日のメニューも録音して使っていい?お願い!」

 は?

 今日のメニュー?料理教室的なこと?料理動画も需要はあるだろうけれど?

 首をかしげながら、最後の一口。コロッケを口に入れて、私もごちそう様。

 手を合わせると、優斗が食器を重ねて流しに運んでくれる。自分の分は自分でと教えただけなのに、いつからか母さんの分も僕が運ぶよと、運んでくれるようになった。

 いい子だ。自慢の息子だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る