幕間
白い霧に包まれた巨大な湖、その
だが女の前髪から落ちた一滴の雫が水面に波紋を生み、映っていた景色は
「……命?」
「はい。ここに」
声が返って来た方向に女が向くと、そこには頭に大きな獣の耳を生やす巫女服の女性――命がいた。女はそこで苦笑まじりの小さな笑みを浮かべる。
「あら。私の勘もあながち捨てた物じゃないわね」
「む?
「いつもそんな風に気を張っていたら休めないじゃない。そもそもここにいる私が身の危険に気を付ける必要なんて無いでしょう?」
そう言って女――優江は炎を思わせる
「それで、例の話は本当なの?」
「うむ。
命の報告を聞いて眉間に
「二十年よく
「二十年間結界の穴を探り続けた連中の執念の成果じゃろう。
ぼやく優江に苦笑して命がフォローした。神域を拡大したあの時から十年が経つ。町の敵、異族の敵を阻んできた結界は、十年もの歳月をかけてその網を潜り抜けようとした者達の妄執に遂にその
「それで、侵入した連中は何をしているの?」
「分からん。入り込んだという情報だけではこの広い町を
「
「監視はしておるが、特に不審な様子は無いのう。少なくとも連中の『草』が誰かと特別な接触をとる様子は無さそうじゃ」
「ま、当たり前か。連中の所属は割れているもの。
つまらなそうに言い捨てる優江。
「とりあえず監視は続けて。後の
「うむ」
短い返事を残して命は身を
「もしあなた達が辿り着けたら、その時は――」
その口から
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