第11話 奥
優江に先導されるまま長い廊下を右に折れ左に曲がり、迷路のような構造の廊下を歩いた
これこそがこの屋敷の『奥』に至るための入口。一見ただの
襖の前で振り返った優江は、クリスの方を向いて説明を始める。
「この向こうには二つの種類の道が続いているの。一つは開いた者の心に感応した屋敷が作り上げる『奥』の世界。そしてもう一つは、中を『
優江が襖を開ける。そこには左右に連なる
「真なる奥へと続くこの廊下を抜ければ、
どこまでも続く廊下を指差して優江の口が小さな笑みの形になる。往々にして優江がこういう態度を取った時にはろくな目に遭った
「リカ姉!?」
「っ
駆け寄った愛音の手を取って立ち上がる六花。どうやらこの敷居の部分を境に凄まじい神気が満ちているらしい。六花、愛音は手を握り合ってその敷居の前に立ち、数度の深呼吸の後、二人は遂にその敷居を跨いだ。
「僕達も行ってみる? クリス」
武の背に負ぶわれていたクリスが目を丸くし――そして廊下を一歩一歩進んでいく二人の姿を見てクリスは武の背から降りた。
「はい! 私達もお二人と対等に向かい合うために頑張りましょう!」
クリスに手を引かれて武はその敷居を
溺れてしまいそうな密度の高い神気は、神域に踏み込んだ者を容赦無く絡めとる。あの『爆弾』より更に密度の高い神気に全身を包まれ、意識が漂白されそうになり――必死に混濁していく意識を繋ぎとめた。これ程高密度の神気を吸っていれば、例えヨモツヘグイを重ねていても神気による変質は抑えきれない。武は二歩、三歩と勝手に前に進む足を止め、隣にいたクリスを抱きしめて入口に飛び込んだ。
『奥』へと続く廊下から転がり出てきた武とクリスは、その直後廊下から飛び出してきた六花、愛音の下敷きにされてしまう。よろめきながら立ち上がる四人に優江は微笑みながら言った。
「これであなた達は奥へ繋がる道を『
「十年って、そんなにかかるの……?」
呆然とした顔で愛音が呟く。それを聞いた優江はつま先立ちで背伸びをして愛音の頭を撫でた。
「十年でも凄い事なのよ。初めてこの屋敷に来た人がこの奥に入り込めるようになるまでには、きっと五十年はかかると思うから。それとね、『
「え、た、武と、その、子供を……?」
微笑む優江を前に真っ赤になる愛音。そこで優江は六花、武、クリスの顔を見回す。
「情を交わすのは特に禁止しないけど、きちんと産んだ子を養育できる環境が整うまでは避妊をしっかりしてね。チャオ」
優江は敷居を跨ぎ、向こう側から
内から
「……とりあえず、一休みしようか」
言うなり武は襖に手をかけ、開け放つ。そこには先程まであった廊下の代わりに地下へと
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