第3章 ③2人の大統領

咲子は、まず現大統領のことを調べ直した。


4年前、突如として、政界に躍り出た大統領は、経済界で、彼のことを知らない人はいないものの、政治の表舞台に立つということは、世界を驚かせた。


対抗馬の保守派の候補者が、圧勝すると思われていた。でも、最終、その左派候補者の不正が露呈して、どんでん返し的勝利を大統領は勝ち取った。


大統領になるなり、幾つかの思い切った大統領令を出したり、記者会見で、今までの大統領とは違う圧倒的な強い態度と言葉で、彼の考えや、政策、今までの外交政策の批判をあまりにもはっきり述べすぎるため、敵を作って、大手メディアは、彼を罵り、悪評高い大統領としてスタートを切った。


「あなたは私たちの大統領じゃない!」というプラカードを掲げた民衆が、ホワイトハウス前でデモを起こしていたこともあった。


大統領を引き下ろしたい組織や人から、あらゆる疑惑や嫌疑をかけられ、調査されたが、どこを叩いても、真っ白だった。


そして、彼の思い切った政策は全て、アメリカにとって、アメリカ人にとって、より良い環境を作り上げていった。

失業率は過去最低。犯罪も減り、ガソリンや薬の価格が下がり、人々の暮らしは、良くなった。


中国に対しての思い切りのいい厳しい政策で、中国頼りの工場をアメリカ国内に戻した。

国内でのエネルギー確保ができるパイプラインをカナダから敷き、それにより、雇用を産むことと、エネルギーの価格ダウンを実現した。


彼が任期の間は、アメリカ兵が、戦争をすることはなかった。


そして、1番、目を見張ることは、何と、宇宙軍を創設したことだ。

「宇宙軍!!」

この概念は、これからの地球の行く末を、

宇宙の中の一つの星である地球を、

今までの規模とは全く違う視点から見せてくれそうな大きな期待感を世界中の人に与えた。


日に日に、アメリカ人たちも、そして中国に対して、その覇権を疎ましく思っていたその他のヨーロッパ諸国も、この大統領のやることなすことの、大胆さに、夢中になり、期待をするようになった。

そして、強さを取り戻してきたアメリカのリーダーシップに、世界は再び注目するようになっていった。


とにかく、この4年で確実に世論は変わった。YouTuberたちも、彼を題材とした動画を上げればヒットを飛ばせた。

とにかく、良いも悪いも、これほど注目された大統領は、フランクリンルーズベルト、ケネディ以来、見たことはない。


そして、咲子は、今回、就任を迎える新しい大統領のことを調べた。


次期大統領に関しては、あまりにも、情報が少ない。

前大統領の時に副大統領を務めていたが、あまりに存在感がない。

その代わりに悪評というか、陰謀論的な噂が、たくさんある。

中国共産党と彼の息子は、かなりズブズブの関係で、中国のある企業から、多額の収入を得ていて、アメリカの情報が筒抜け状態だという疑惑、もちろん父親も関与している、というような内容で、YouTubeなどで調べるとたくさん情報が出てくる。


小児性愛に陥って、人身売買に関わっているとか、近親相姦の話とか、目も耳も覆いたくなるような酷い陰謀論が出てくる。

そして、娘はその犠牲になった一人で、現在精神が分裂しているか、ウツだと云う。

彼女の日記が公開されていて、確定は出来なくても、含みのある回想シーンが記述されている。


ものすごいスキャンダルにも関わらず、大手メディアは、いっさい報道しない。


一国の大統領、しかもアメリカの大統領たる人の家族の素性が、これほどまでに酷いのは、前代未聞だ。

噂に過ぎないと言う人もいるだろうが、噂があるだけでも過去に例を見ない。


ただ、咲子は、真実を知りたいが、自分がとっている情報も、ネットから引っぱるだけでは、やはり、自分が、最初に目にした情報側のバイアスがかかり、それによって近い情報となるため、やはり偏ることを分かっていた。


現場100回とはよく言うが、やはり自分の目と耳で、情報を得たい。


咲子は、DC行きのゲートで、このショートトリップにワクワクしながら、フライトを待っていた。

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