第3章 ②大統領選
ワシントンD.C.に出向く前に、咲子はどうしても分からないことがあった。
今回の大統領就任式は、収録をしてから、各ニュースでオンエアになるので、雑誌や、新聞もそのタイムテーブルを守る契約が交わされていた。
普通は、大統領就任式は、当然Liveで生放送される。
時間が押すことがあっても、番組枠としては、最高の権限を与えられるため、延長してでもLiveで、最後まで放送される。
記者会見は、その後に用意され、その後各々のマスコミ媒体が、記事を掲載する。
なぜか、今回は、生放送だと終わり時間が読めないという理由から、
収録して、編集して、翌朝に放映されるのだという。
咲子の直感が、「何かおかしい」としか言わない。
好奇心旺盛な咲子は、真実を知りたくてウズウズした。
毎回のことではあるが、二つの政党が、お互いに、選挙に負けた時、
「不正があった!外国の介入があった」と、まくし立てる。
左派、右派のテレビ番組は、相手を極端なまでにディスるため、アメリカ国民もどちらかに分かれて、お互いをディスり合う。
しかしながら、国民は、不正があってもなくても、それが選挙結果だと、納得している部分もある。
それが、アメリカの現状だと、結果をのみ、お得意の個人主義で、自分の自由さえ脅かされないなら、と元の生活に戻る。
ところが今回の大統領選挙は、いつもと少し違う。
現大統領の4年間の実績が素晴らしく、アメリカの景気は右肩上がり、失業率は過去最低、自国でのエネルギー確保、不法移民の減少と、誰もが認める結果を出した。
しかし、最後の一年に差しかかったあたりから、謎のウイルスのパンデミックにより、多くの人が、死に至った。
州ごとに、ロックダウン。経済も滞った。それでも、ウイルスが感染拡大する勢いは止まらない。
このウイルスはどこから来たのか?
最初にパンデミックが認められたのは、中国だった。
そのあと、あっという間にアメリカに広がった。
アメリカだけではない。
イタリアやスペイン、フランスといったヨーロッパ諸国、その後に韓国や日本などアジア圏に広がり、パンデミックは、世界中に広がった。
各国は、それぞれのリーダーが、感染拡大防止の政策をとり、
大半の国は、ロックダウンで、人々の動きを止めた。
飛行機も飛ばなくなった。
観光地に人が溢れることもない。
食べるものを買うのでさえ、外出許可証をダウンロードして、持ち歩かなくてはいけない国もあった。
まるで、世界大戦のように、家に篭り、ひたすらこの得体の知れないウイルスに怯える日々が続いた。
あらゆる噂が、飛び交い、大手メディアも、ユーチューバーも、それぞれが手に入れた情報をそれぞれの都合で、世に伝えた。
何が本当なのか、判断できないような状況だ。
一年前に、こんなことが、自分が生きている間に起こるなんて、誰が想像しただろう。
だけど、人が動かなくなった地球は、とても浄化され、河川や海は、透明に美しく戻り、大気汚染も、ずいぶんマシになり、空が美しくなった。
地震学者によると、地球の振動がなくなり、微細な地震による揺れが感知出来、地震の予測が立てやすくなった。
地球の浄化のための犠牲なのか?
それにしても何もかもが一気に変わってしまった。だから、人々は、これまで通りに、ただ、慣れた生き方をするということが、無いことを悟った。
こういう時に、必要なのは、強いリーダーだ。
現大統領は、強いリーダーシップで、たった4年で、アメリカを強くした。
だから、やはり彼の再選を望む国民が圧倒的に多いように思われた。
方や、左派は、この大統領を敵とみなし、あることないことを報道して、彼を諸悪の根源のようにイメージづけ、全く違うタイプを大統領選挙に立たせた。
「パンデミックは、現大統領のせい。今こそ、全く違うアメリカに、向かおう」というスローガンを掲げて。
でも、それぞれの講演会の人の盛り上がりを見れば、アメリカ人が、誰を望んでいるのか一目瞭然だった。
現大統領のラリーは、大型スタジアムで行われ、そこに、満杯の人々が集まり、大統領の熱気あふれるスピーチに、最大限の盛り上がりを見せた。
一方、左派の大統領候補の講演会は、数十人しか集まらない。
そこで、優しく静かなスピーチが、行われ、左派マスコミは、「この優しい大統領は、人々の傷ついた心がわかる大統領だから、現大統領よりも素晴らしい世界平和への道を築ける。」と無理矢理賞賛するも、どこの州でも、閑古鳥がなくラリー会場であることが事実だった。
誰もが、現大統領の再選を予測したにも関わらず、何と、今回の大統領選は、この、閑古鳥スピーチの、新しい大統領の、勝利に終わったのだ。
現大統領は、史上最高の票を獲得したにもかかわらず、それよりも多い票を獲得したのだ。
何が起きたのか?もちろん不正だ!と人々は、立ち上がった。あらゆる人が、選挙管理委員会や、州務長官を相手取り訴訟を各地で起こそうとした。しかし、何故か、裁判所によって、訴訟が棄却された。
それでも、今回ばかりは、アメリカの人々は、あきらめず、各地でデモが行われた。
人々の現大統領再選への、熱い思いも虚しく、日々がすぎる。大統領就任式に向かっての準備がどんどん進んでいったのだ。
咲子は、やはり、他の多くのアメリカ人同様、今回の大統領選には、大きな不正があったことは、間違いないと思っているが、何かもっと、大きな計画がこの地球で起こってる気がしてならなかった。
パンデミックのタイミング、大統領選のタイミング、全てが、重なっていること自体が、普通に考えて、おかしいと気付かされる。
大枠で物事が見えたら!と強く咲子は思っていた。
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