第2章 ②紳士との出会い

「Help me!!somebody!」


「シッ!静かにしなさい!」と口を押さえられた。


…もうダメだ、、うん?、、日本語??!


咲子の腕を引っ張り、ショップに引きづり込んだのは、日本人の男性だった。

ツイードのジャケットを着たとても紳士的な50代半ばぐらいのおじさん。

押さえてる手も優しく、咲子を見る目は、優しく微笑んでいるように見えた。


ショップのショーケースの後ろ側に身を潜めているうちに、さっきの二人連れの男たちは、行ってしまった。


「アメリカにこんな女の子が一人で来るなんて、呆れるね。

日本人はみんな頭ん中がお花畑なくらい平和ボケしてるから。

とにかく、特に一人ぼっちの他国から来た子どもなんかは、本当に気をつけないと、人攫いに遭って、人身売買されて、もう誰にもあなたを見つけ出せなくなるってことがあるんだよ。

君はトランジットしてどこに行くの?」


「ミシガン州、、おばさんが空港まで迎えに来てくれる。」


「ミシガン州なら、わたしと行き先は同じだ。

とにかくおばさんに会うまでは、父娘のフリをして、わたしについて来なさい。」


咲子が、信用していいのかどうすればいいのかモジモジしていると、


「さっきの男たちみたいなのに追いかけられるよりは、こんなおじさんでも一緒にいる方がマシだろ?」


確かに。

今から飛行機に乗っておばさんのいるミシガン州まで一緒に居させてもらう方が、ずっと安心出来る。


今回は素直になろう。


咲子はうなづいた。


その紳士は、キャビンアテンダントに話して、座席を変えてくれるように頼んでくれた。

二人は隣同士の座席に座り、離陸した。


咲子は、ミシガン州に何をしに行くのか、その紳士に尋ねた。


紳士が勤めているグルーバル企業の本社がミシガン州のエイダにあり、この度日本支社から本社に転勤になったということだった。


機内で、その紳士は咲子にこんな話をしてくれた。

「日本に住んでると、とても信じられないことだけれど、世界中で、このアメリカでも、何十万人という子どもたちが、行方不明になってるんだよ。

そして、人身売買が普通に行われてる。

だから、君みたいなティーンネイジャーが、一人で、旅をするには細心の注意がいることを忘れないように。

必ず、大人のそばにいること。

田舎町ならまだ大丈夫だと錯覚を起こすけど、それでも、やっぱり君が生まれ育った日本の京都とは違うんだよ。

子どもたちが自分たちだけで、普通に集団登校出来る国だからね。

アメリカでは、どこの子どもも、学校へは親か、シッターが、送り迎えするのが当たり前なんだ。

そして、法律で、子どもを一人、部屋の中に置いて出ること自体が、虐待として罰せられるんだよ。

鍵っ子なんてありえない。」


咲子は、本当にビックリした。

人身売買??

はっきり言って現実味のない言葉。

でも、さっき追いかけられたあの二人の男に、もし捕まって、どこかに売り飛ばされたらと想像したら、本当に背中がゾクっとした。


危険な目にあったから、経験したからこそ分かることだった。


紳士の話が本当なのかどうなのかは、もちろん判断出来ないけれど、

その言葉はしっかりと胸に突き刺さった。

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