第1章 ①ママとニューヨーク

「カイト、早くいらっしゃい。ディナーの予約の時間があるんだから。」


ハドソン川が、夕焼けで染まるのをホテルのラウンジで、ぼーっと見ていた僕を、ママがせきたてた。


小学校最後のニューイヤーイブを、絶対にニューヨークで、過ごさせてやりたいと、両親が連れてきてくれた初めて訪れたこのアメリカで、しかもニューヨークで、僕はカルチャーショックを受けて、毎日、色々なシーンに呆然とした。


京都で生まれて、たぶん、、、

かなり恵まれた家で育てられて、旅行好きな両親に、韓国や、グアム、サイパン、台湾と、アジア圏や比較的近い海外に、夏休みや冬休みに連れてってもらっていた。


夏休みに、2人でかき氷を食べに行った時に、僕が知らなかったママの結婚前の話を初めて聞いた。


ママは、アメリカのニューヨークで、ジャーナリストっていう仕事をしていたらしい。


ママが、昔アメリカに住んでいて、パパとそこで知り合ったことは知っていたけど、あまり詳しいことは知らなかった。


「ママはね、お母さん、つまり、カイトのおばあちゃんに、アメリカのミシガン州ってとこの高校に放り込まれたのよ。


田舎だけど、とてもいい街だし、

ママのおばさんとおじさんが住んでるから安心だって、、


ほんとに田舎町で、とても綺麗な街だったけど、ママは大都会にすごく憧れて、ニューヨークシティーに一度は行ってみたいって思ったの。


高三のサマーバケーションに、おじさんとおばさんにニューヨークに旅行に連れて行ってもらったの。


ママがいた街とは、全く違った。

超高層ビルが立ち並んでるの。

スカイスクレイパーって言うんだけどね。


もう、キラキラッした大都会で、街を歩く人たちが本当にカッコよくって、全てがカルチャーショックで、身体に電撃が走る感じ。

とにかく、興奮したわ。」


ママのおばさん、つまり、ぼくのおばあちゃんの妹は、アメリカ人のおじさんと結婚して、ミシガン州に住んでいた。


ママは、その家にホームステイして、地元の高校に通っていた。


ぼくは、その大おじさんと大おばさんには、会ったことはなかった。


ママは、その初めてのニューヨークで、大興奮し、日本に戻らず、ニューヨークにある大学に通うことを決めたのだ。


ジャーナリズムを専攻し、卒業した後は、有名な出版社で、記者として数年働いた。


そして、フリーのジャーナリストとなり、毎日違う所で寝泊まりする日々を数年送っていた時に、ワシントン州にある大学の客員教授としてアメリカに来ていた日本人のお父さんと出会った。


そして、結婚して、お父さんが、日本の大学に帰る時に、日本に戻って来たのだ。


ママは、ぼくからすると、普通のお母さんで、地元の小学校で、PTA活動とかは、積極的にやっていたけど、

アメリカを駆け巡って仕事をしていたジャーナリストだったなんて、想像することも難しかった。


ただ、英語だけは、話せた方が便利だからと、家では、どちらかというと英語で会話することが日常で、ぼくは、いわゆるバイリンガルになっていた。


ママは、週に1〜2回、うちで英会話教室を近は所の子ども相手に開いていた。

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