第26話 「碩学」の実践

 豪志は言った。

「「東京音楽祭」を仕掛けていきます。世界中からPOP音楽家を東京に集めて音楽フェスを開きます。music部門とlyric部門に分けてそれぞれ採点し、合計点を競います。代表メンバーとして、ノエル・ギャラガー、トム・ヨーク、エリカ・バドゥ、宇多田ヒカルの4人をヘッドライナーに起用します。東京ドーム、横浜アリーナ、幕張メッセ、さいたまアリーナを借り切り、2週間かけて開催します。各会場で1日2組ずつ、2週間で112組のアーティストが競います。全世界に向けてネット配信も行います。最優秀者には、ジョン・レノンがかけていたのと同じモデルのメガネを「レノン・グラス」として贈呈します」

 伊東乾に「東京音楽祭」について訊くと、

「アイデアはいい。ノエル・ギャラガーは、まあ普通だろう。トム・ヨークは、ちょっと深い。宇多田ヒカルもアジア代表としてベストだろう。エリカ・バドゥは・・・。難しい。ブラックミュージック、黒人音楽というのは非常に深い。おいそれとは語れない」という。黒川も同意する。

「「日比谷リーグ」はどうでしょう?Jリーグのプレシーズンに、ヨーロッパ、南米の中堅クラブを東京に招いてプレシーズンマッチを行うのです。FC東京、横浜マリノス、フロンターレ川崎に、例えば、ドルトムント、バレンシア、マルセイユ、コリンチャンス、サンパウロを招いて、合計8チーム総当たりで日水日水日水土の3weekで終わります。シーズン前の強化としてもピッタリで、味の素スタジアム、三ツ沢スタジアム、等々力スタジアム、駒沢スタジアムの4会場で。各国有名シンガーによるアンセムの独唱、ファッション雑誌への露出など」

「「プロ野球改革」も進めます。セントラルリーグ、パシフィックリーグとも2チームずつ増やして8チームずつのリーグ戦にします。クライマックスシリーズは「クライマックスリーグ」と改称して、各リーグ4チームずつ進める。1位は3勝のアドバンテージ、2位は2勝、3位は1勝。総当たり、6試合ずつ、合計18試合の成績で日本シリーズ進出チームが決まります。そして、日本シリーズは最大7試合と」

「レギュラーシーズンはセパ各リーグの総当たりが7チーム×10試合ずつ、合計70試合。交流戦が8チーム×6試合で48試合。そうすると、年間リーグが、118試合で済むんですね。空いた分、アジアリーグや日米野球に時間を割けます」

「その他にも、クラブワールドカップ改革、アジアチャンピオンズリーグ改革、高校野球、高校サッカー改革、バスケットボールのクラブワールドカップの開催など、色々思いつきます」

「どれも極めて初歩的な数学です。「碩学」を使うと浅い知識がこんなにも実践的になります」

「「東京大学大学院情報学環入試制度改革」を行います」

「碩学入試」

「大学入試センター試験5教科15科目1700点満点で入試を行う。全ての科目をまんべんなく修めているか。「すべて」を理解しているか。浅く広い知識を問う」

 西原理恵子がテレパシーで現れて、

「アタシや青木雄二さんたちも本当は東大で勉強したかったんだよ」という。

「社会的に特別な功績があった大人向けに「特別社会人入試制度」を設けるべきです。具体的には、公立高校入試の英数国理社の5教科500点満点で優劣を決める。これなら、北野武さんや福山雅治さんも東大で勉強できます」 


 弁護士、検事など法曹の専門知識をリーガルマインド。医師、看護師など医療従事者の専門知識をメディカルマインド。公認会計士、税理士など会計の専門知識をフィナンシャルマインドというらしい。

「豪志、お前もひとつくらい身につけろ。弁護士はどうだ?」という。無理だって(笑)。


 豪志が海城高校を卒業して現役のとき、センター試験で664点/800点。東大文Ⅰと早稲田政経と立教法を受けて立教しか受からず、一浪してセンターが685点/800点。東大文Ⅰと早稲田の政経と法を受けて全滅。父親からは幼少期から東大法学部を出なければ人生終了のような洗脳を受けていた。だが40才手前になって、とっくに吹っ切ったつもりだったのに、伊東先生も美夏ちゃんも堀江さんも「お前は東大しかない」という。顔で決めてねーか(笑)?自分で客観的に振り返って、やはり東大に入るチカラはないと思えた。美夏ちゃんも、

「ゴキ君はちゃんと予備校の東大コースに通って2浪ぐらいして文Ⅱか文Ⅲかのう」と言う。

 うーん、ただ、不思議なチカラは持っている気がした。それこそ世界平和まで達成してしまうような。

 東大出ても芸能人になったり、クイズ番組に出たりして喜んでるヤツもいる。学問ってそういうものでもない気がする。学力とか能力って難しい。

 精神病院から脱出したい一心で大人たちを集めていたが、いつの間にかみんなで世界平和を達成するという話になって、面白がってドンドン人が集まってきて、最後はリベラル対保守の争いのようになってしまった。

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