第10話 羊齧りの会
村田美夏さんにfacebookで「羊齧りの会」という会員制食事会を紹介してもらった。
「根岸さんは絶対こっちだと思うな」と。
関西には「牛齧りの会」というのがあるらしい。「羊」は関東、リベラル、中国寄り。「牛」は関西、保守、米国寄りだという。
facebookから「羊齧りの会」に参加予約のメールを出してオーケーの返事をもらった。次は亀戸の中華料理店で開催するらしい。
当日、群馬から一旦、松戸の実家に寄り、その後、金町からバスで新小岩へ。新小岩で亀戸行きのバスに乗り換えた。亀戸に着くと、徒歩で中華料理店へ。裏口から入ると中国人の女性店主が出てきて、
「羊の方ですか?」
「頭いいですね」と。
会場に案内されると、まだ準備中だった。ステージの上ではお笑い芸人たちが打ち合わせをしている。
店の中国人の女の子が2人、豪志のそばに来て何事か目配せをしている。豪志は疲れていたので、空いてるソファの上で横になっていた。そのうち女の子たちが着替え始めたのだが、豪志は構わず無視して寝ていると、女の子のうちの一人が泣き出してしまった。プライドを傷つけられたのだろうか。
店の他の従業員たちがやってきて
「ピャンリャオ、ピャンリャオ」と慰めている。そうか。「ピャンリャオ(キレイだよ)」で良かったのか。そのくらいの中国語は豪志も知っていた。
やがて、人が集まり始め、開会のアナウンスが流れる。
「入り口で受付と参加費の支払いを済ませてください」
参加費は八千円程度。
「リアルに高いな。村田さんが払ってくれるんじゃないのかな」と思った。
くじ引きで座席が割り当てられ、豪志は「36番」。その席に向かう。円卓がいくつもあって、それを囲んで数名ずつ座るスタイル。豪志のテーブルは豪志を含めて、男性3人女性3人という感じだった。
「羊齧りの会」が始まり、ステージ上で芸人が司会を務める。テーブルには羊肉を中心とした中華風料理が運ばれてくる。食べてみると、どれもこれも美味い。
豪志の横にホステス役の50代くらいの女性がやってきた。
「いかがですか?遠慮せず、召し上がってくださいね」
「ありがとうございます」
ステージ上では落語家による落語が始まっていた。豪志が後ろを向くと、VIP席があり、村田さんと茂木健一郎先生らしき人たちが座っていた。
落語が終わると、お笑い芸人が
「それでは師匠を呼びましょう!師匠!師匠!」
ステージ脇から春風亭昇太が現れた。営業なのだろうか。最後は歌手が歌を歌って締めくくった。
数人の客と話したが、特にVIPという訳でもなく、物珍しさで参加したという人もいた。
結局、そのまま「羊齧りの会」は終わり、
「一体、何だったんだ」と少し腹立たしく思い帰路に就いた。facebookに「羊齧りの会」での詳細を書き、新小岩のアパートに帰って寝た。
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