第3話
反論できません。
だって、エドモンド殿下が何を言っているのかわからないのですから。
(お嬢様、もう殺っちゃいましょう! 大丈夫です、先っぽだけ。先っぽだけだったら刺してもバレませんって!)
(何の先っぽを刺すのかはわからないけれど……我慢しなさい、テレサ。ここで話を終えてしまったら、殿下が何をしたかったのか永遠にわからずじまいよ。気になって夜も眠れないわ)
「お前は愛する僕が奪われたことに嫉妬してアリッサを殺そうとしたのだ! 貴様のような醜悪な女には似合いの行動だな! だが……もはやお前の罪は明らかだ!」
私がアイコンタクトでテレサと話しているうちも、エドモンド殿下は1人でエキサイトしています。
ああ、1人ではありませんね。アリッサさんや他の取り巻きも「そうだそうだ!」と殿下を援護するように言い募っていますから。
やがて言いたいことを全て言い終えたのか、エドモンド殿下が大きく両手を広げて高々と宣言します。
「マリアンヌ・ロゼッタ! 僕はお前との婚約を破棄する! そして……ここにいるアリッサを妻にすることを宣言する!」
「はあ……そうですか?」
「そして……我が妻アリッサを殺そうとした罰として、お前をこの国から追放する! ロゼッタ公爵家にも相応の罰があるだろうから覚悟しておけ!」
「…………」
私はますます訳がわからなくなってきました。
婚約破棄をする……それは自由です。
アリッサさんと結婚する……それも勝手です。国王陛下はお許しにならないでしょうが。
けれど、エドモンド殿下には私をこの国から追放する権利はありません。
裁判などの手続きをとることなく人を裁く権限など、国王や王太子にだってないのですから。
「フッ……お前の罪状を突きつけてやれば、父上も追放を許すはずだ! ロゼッタ公爵家のような穢れた家がいなくなれば、この国もさぞや平和になるだろう!」
すごい。
すごい馬鹿です。自分に酔っているのがヒシヒシと伝わってきます。
どうやら陛下はエドモンド殿下のことを甘やかしすぎたようです。まさか、法律もまともにわからないとは感心するほど暗愚です。
(お嬢様アアアアアアアアアアアアアアアアアッ!)
(いや……もうこれは放っておきましょう。あとはお父様と国王陛下が勝手に処理することでしょう。テレサが手を下すまでもありませんよ)
今にも暴れ出しそうなテレサを宥めつつ、私はエドモンド殿下がたどることになるであろう暗い未来を予見しました。
婚約者に一方的に婚約破棄し、ありもしない罪を被せて侮辱したのです。
いくら王太子といえど、国王陛下からは厳しい罰が与えられるのは間違いありません。父上も報復するでしょうし……おそらくですが、エドモンド殿下は廃嫡されることでしょう。殿下は王太子ではあっても、他にも王族はいらっしゃるのだから。
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