主治医を選ぶときには慎重に。

@tokyonishiakitani

第1話

主治医を選ぶなら女医がいいという声を聞きます。ですがこれは、有名なTVドラマの影響でもなく、男性視点から見たスケベ心でもありません。


実は、ある日本人が発表した論文では「内科では女性医師が担当した入院患者は、男性医師が担当するよりも有意に再入院率や死亡率が低い」と書かれています。ただ、このことについて理由までは明らかにされていないため、どういった調査をして書かれたのかはわかりません。この論文発表者が観察していた女性医師が、軽症患者を担当していただけという可能性もあるからです。


ただ、このことについて私たち小児科医局でも議論した結果、女性医師の方が医療に関して慎重であったり、教科書的な一般的な治療をするからだろうという結論に至りました。というのも、我々の教授であるボスは、「世の中、一般的に広まっている治療が一番有効であるし、それゆえ規則にのっとっているものが正しく認められている」からだと、いつも口癖のように言っています。だから、女性医師の方がいいのだという結論になるのかもしれません。


カンファレンスでは、患者にどの治療法でいくのかを提示する場合でも、医師の考えは伝えます。そして、なぜその治療を勧めたのか、それは一般的な治療法なのか、このケースの場合妥当なのかということも、明らかにしなければいけませんでした。私自身もそう思っていましたし、この件についてもそうです。


ですが現在、大学医局による医師教育制度が崩壊し、医師は独自の治療法を提案するケースも増えてきています。だから基本にのっとった治療法をする女性医師が注目されているのかもしれません。でもこれは女性医師だから基本にのっとった治療をすると決めつけるのも危険だと思っています。私は上司から一般的な治療法を教えられましたが、新しい直属の女性医師は、独自の治療法を進めるタイプの医師だったからです。基本に忠実に治療する医師と独自路線で治療を進める医師を、本当に性別で区別できるのかに私自身は疑問を持っています。


とはいえ、外科医では男女の差はないものの、内科医では男女で死亡と再入院の差があることも事実です。この理由については、まだ明確にはなっていません。

ただ一つ言えることは、治療は主治医の方針が最優先されるため、主治医を選ぶときには慎重に行った方がいいということだけは確かです。

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