第6話 銀色のカラスへ

拝啓


鋼鉄の空が落ちてくる日々が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。


私の指先に宿る、マシュマロの様な雲が雨を降らせています。南向きの風に誘われて、ちょっとしたデート感覚で、少しだけニヤけてしまう私がいます。


さて、そんなくだらない時間で一日を消費していますが、先日の新聞の一面に、トンビが鷹を産んだと掲載されていました。その翌日には、コウノトリが人間の赤子を運んだと、大きく写真が掲載されていて、人々はその話題でもちきりでした。


人は物事の始まりと終わりだけに興味を持ち、その経過などはどうでも良いようです。

発情期を迎えた猫の様には生きていけず、むしろそうでない事の方が、人間が存続していくのに向いているのでしょう。


遺伝子が突然変異して、あなたは銀色の羽を手に入れた貴重なサンプルとなりました。これから多くのマスコミが押し寄せて、沢山の人々が興味を持つでしょう。しかし、あなたはカラス。どうでも良いことです。何事もなく、孤独を愛して下さい。


お身体にはお気をつけて。


敬具

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る