第3話 図書室のチャラい先輩

中学二年の春。それはポカポカした春の太陽に包まれた日だった。


図書室のいつもの席であまねは東野圭吾の白夜行を読んでいた。


例の茶髪のチャラい男子学生はまだ来ていなかった。


ページをさらりとめくる。この音がなんとも心地よい。物語の事件は泥沼のように汚らしくよごれていく。その真相を早く知りたいとあまねはページをめくる指を早める。


「ドン」


前の席に人が座った。


あ、あのチャラい先輩だ。


こんにちはと言ってみようと思ったがやめておいた。


いきなり知らないやつが挨拶したらおかしいだろう。


あまねは読書に集中した。


「ヒューイ」


ふいにチャラい先輩が口笛を吹いた。そしてイスを引き腰掛けた。こっちを見て笑っている。


彼の持っている本を見ると「白夜行」と書かれていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る