第2話
雅哉は悠飛の言葉にフンっと鼻で笑った。
「そこに関しての決定権はお前にない。つまり、お前ん家で決定だ」
「待て、勝手に決めるな。というか、俺の人権はどこに……」
トントン
そんな言い合いをしながら雅哉がドアノブに手をかけた時、ドアがノックされた。
悠飛と時雨はギョッとしてすぐさま楽屋の端に移動する。
ノックしたのがスタッフの場合、キャラ作りがバレるからだ。
一人の時にバレる確率は少ないが三人揃うと誰かしら気が緩んでボロが出るので要注意である。
が、雅哉はそれ程気にしていない。
雅哉はクールで真面目というよりは俺様で
自由人という方がしっくりくる性格でバレても構わないと思っている。
むしろ、バレた方が自分の好きなゲームやアニメに関わる仕事が入ってくるかもしれないのでいいと思っているタチなのだ。
三人、というか二人が身構えているとドアの向こうから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「三人とも、悠太だけど」
「なんだ、お前か」
雅哉が面白くなさそうな顔でドアを開ける。
そこに立っていたのは有名菓子店の袋を持った二十代前半の男性だった。
グループのマネージャーであり、悠飛の双子の兄である
全体的な顔立ちは似ているが悠太はたれ目っぽく悠飛より小柄なのが特徴である。
悠太は部屋に入ると雅哉の顔を見て噴き出した。
「あはは、雅哉は相変わらずだね。つまらなさそうな顔」
「事実つまらないからな」
堂々と言い切る雅也を悠飛が睨む。
この二人が性格の違いから衝突するのはいつもの事だが放っておくとお互い暴力勝負になるため喧嘩になる前にどうにかしなければならない。
とはいえ、喧嘩するほど仲がいい的な要素もあったりするのだが。
「まあまあ。ほら、限定品のスイーツ貰ったから悠飛の家で食べよう」
「なんで俺の家に行くことが決定事項になってるんだ?」
兄の提案、というか決定事項に悠飛は頭を抱える。
時雨はそんな悠飛の背中を叩いてグッと親指を立てた。
「それだけ信頼されてるってことで」
「さっきさらっと泊めろっつったのはどこの誰だ?」
「さっきのは、泊めてくれたら嬉しい」
「お前の場合はイコール泊めろだろ」
暫く悠飛と時雨が同じようなやり取りを繰り返していると欠伸をしながら雅哉がドアを開けた。
悠飛は肩を揺らすと、瞬時に時雨と距離を置く。
「ほら、行くぞ」
「お前っ、声かけろ!」
悠飛は青ざめながら雅哉に続いて楽屋を出る。
ちなみにこのやり取りはほぼ行われているのだが雅哉は反省という言葉を知らない人間なため繰り返し続けている。
最後に楽屋を出た悠太は苦笑しながら悠飛に小さな箱を渡す。
「はい、胃薬」
「……」
悠飛は兄から貰った胃薬をなんとも言えない顔で鞄にしまう。
その横で時雨はニッコリ笑った。
「良かったね。胃薬を渡したいイケメン芸能人ランキングがあったら一位になれるよ」
「そんなランキング……」
あってたまるか。
そう悠飛が反論しようとした瞬間、悠太が目を見開き、猛スピードで時雨と雅哉を自動販売機の陰に連れ込んだ。
無理矢理首根っこを掴まれ、雅哉は悠太に批判しようとするが口を塞がれたため声が出せていない。
「急にどうしたの?悠太」
「来た」
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