第3話





さぁ~て、視点は戻りまして我らの主人公翠野イスズに移りまする。


赤髪の女性、不知火 百合氏を『新入生挨拶で出るということはおそらくパッケージイラストでセンター飾るような奴に違いあるまい! 多分だがまだ見ぬ敵である攻略者はそっちからスチル回収作業に行くだろうし……、あんま近づかんとこ。』と決めつけ行動方針設定した彼女。自身の後ろに座る桃色髪のあゆむちんが親しみやすくていい子であることと、しかもその隣にいじり被害者担当こと苦労人の経験値を稼いでいる少年、半田君がいい奴だったためてっきり油断して普通の学生生活を送っておりました。



その時分、油断している時にこそ物事が進むのは世界の理であるからして……、注意していたはずの不知火氏が攻略者らしき男性と融合を果たしていたわけでございまする。それを発見した緑色は大乱心、暫定的に今自分がいる世界をエロゲー世界と仮定しどうにかして攻略者の魔の手から逃げようと画策中であります。



では、自身の貞操を守るために急いで帰宅する彼女の様子を確認してみましょうか。






 ーーーーーーーーー





「マズいマズいマズいマズいマズい!!!!!」




通学路を『マズい』と叫びながら爆走する女学生、15歳! 私、翠野イスズ! 元男の転生者でおそらくR18の世界に放り込まれた女の子だよ! あいにく私を転生させた神様なんか見たことないけどもし出会えたら全力のボディブローを食らわしてやると誓った攻略対象者サ!


もう自分が誰かに喰われるのを理解してしまったので自己紹介でもしながら頭の中整理しないと正気を保てないヨネ! ここで何も考えずに立ち止まったら発狂して外宇宙の邪神様方に信仰の踊りを捧げてしまいそうだよ! 本当になんでこんなとこに放り込んでくれたんですよねぇ!!!


制服からたぶん同じ学校の生徒とか小さいころから私のこと知っているご近所さんとかに思いっきり私の狂乱見られているけどそんなことどうでもいい! とりあえず私が安心して身を隠せるような自宅に逃げ込むのだ! 正味エロを売りにしてるゲームのヒロインの自宅とかイベントの宝物庫だし、私にとっては火薬庫に他ならないけどそこぐらいしか外敵に怯えなくて済む場所が思いつかねぇ!



「見えたァ! 私のおうちィ!!」



目標発見! 今から突撃する!


最速で家に入るために履いているローファーの踵で急ブレーキ。ローファーで全速力ダッシュしたせいで鍛えてない体は悲鳴を上げているし、このブレーキのかけ方は新品の靴の耐久値を著しく削るがどうでもいい。学生用のローファーなんてたかが数千円、私が失いそうになっているのは値千金だ。まぁ値段付けるの私か変態ぐらいなんですけどね!



勢いよく家のドアを開け、力の限り叩きつける。急いで二つある上下のカギを締め、チェーンも掛けちゃう。後は小さい覗き窓をそっと見て後ろから誰もついてきてないことを確認したら……



「ただいま……、ハァ、ハァ、ハァ。」



息を整えながら私の城を守ってくれる薄っぺらいドアに体重を預け、その場で座り込む。そんでもって頭の中にやっと血が巡り始めて酸素を供給されるようになってきたおかげで現状を理解しだす私。……別に何かから追いかけられているわけでもないし、全速力で逃げる必要なかったんじゃないかと。



「あら~。イスズちゃん、お帰りなさい~。どうしたの息切らして顔真っ赤で……。あ! もしかして学校でかっこいい人でもいたの!? ちょっと大人びていたイスズちゃんにもついに春が……、今日はお赤飯ね~。」



違うんすよ母上、これ春みたいな初恋。甘酸っぱい感じじゃなくて重いっきし羞恥なわけなんすよ。



「そ、そんなんじゃないよ母さん。……単に走って逃げてただけ。いつも全然運動してないしそれで暑いだけだから。」



「あら~、何かいたの~?」



「うん、まぁ……、不審者みたいなの?」



まぁ異性不純交遊なので不審者と言っても……、さすがにダメか?



「そっか~、あったかくなってくる春先はよく出てくるし、風物詩みたいなものねぇ~。あ、逃げてくるのは正解だし、ちょっかいかけられないようにこれからも逃げるのよ~。」



「は、は~い。」



ぬ、ぬぅ。相変わらず我が母上のお考えはよく解らぬ。確かに春先は裸マントなどの不審者の方々が自己を世間に晒しめようとする時期だけど、風物詩なのか? 前世の記憶が戻る前も、今もなんかふわふわしてつかみどころがないというか、独特の価値観を持っている人だなぁ、って思っていたけどやっぱりですな。



「あ、そうだイスズちゃん。上に上がる前にちゃんと手洗いうがいするのよ~。あとお腹すいたらおやつ冷蔵庫の中に置いといたから自分の名前が書いてるの食べてね~。」



「はーい。」




そんなわけで洗面台に移動し言われたことを行う。ついでに下着を貫通して汗で濡れてしまった制服を洗濯機の中に放り込みスイッチオンぬ。まぁ一応制服用のモードで動かしているから何とかなるでしょう。んで今着てるの全部新しいのに変えて、そして私服に着替えまして、ちょっと小腹もすいているからおやつでも頂きますか。



「お! ショートケーキじゃん、母さん解ってるぅ! ねぇ~! 上で食べてもいい~!」



「いいけど、こぼしちゃだめよ~!」




キッチンから離れて何かしらの作業をしている母に許可を頂いたので冷蔵庫からブツを取り出す。前世から結構甘いもの好きだし、いつも通りの母親の対応といつも通りの家の風景のおかげでだいぶ落ち着いたし、安心した。



「ま、色々対策考えないといけないけどちょっとぐらい甘味休憩、いいよね?」



誰に対しての質問かわからないものと一緒に階段を駆け上がる私。あ、そういえば今日は最近見つけた動画投稿者さんの登校日じゃなかったけ? いや~、記憶戻ってから良かったのはそれまでの記憶を保持で来ていたのと、思い出すまでの趣味嗜好や行動パターンが前世の私と全く持って同じだったことなんだよなぁ。おかげさまで楽しませてもらってます。じゃあこのおいしそうなショートケーキと一緒にご機嫌なおやつタ~イムといたしましょうか!



そう思いながら自室のドアを片手に持つケーキを落さないように勢いよく開ける。






そこにあったのは見覚えのない、豪華な装飾が施された箱だった。







「またかよ。」







 ーーーーーーーーー





現状を整理しよう。今私は至高のおやつタイムに突入しようとしていた。なのに自室には私が所有したことのないような豪華な箱、多分頑張れば私が収まるぐらいの箱、宝箱といってもいい形をしている。それが我が居城である自室の中央にでかでかと置かれているのだ。


なお、先ほどの『またかよ』は自身の思惑の範囲外に存在する出来事が起こったことに対する『またかよ』であり以前に事実に巨大な箱が出現したわけではない。ちなみに一度目は今日学校の教室で体温を確かめ合っていた二人のことについてだ。



「……どうする? 触るか?」



普通なら母親か父親がサプライズか何かで箱を置いていた、というものを思いつくのだろうが残念ながらこの世界はエロゲ世界、購入した方々に賢者タイムをプレゼントするためには少しぐらい世界の法則をいじるぐらいはやってくるだろう。例えばこの箱は何故かミミック的存在であり、開けた瞬間に触手みたいなのが出てきてジ・エンドみたいなのもありうるわけである。


まぁてっ取り早い方法として母親をここに呼び、『マイ・マミー、いったいこの箱は何だい? もしかして今日紹介するイカしたアイテムかい?』というアメリカの古典的通販番組のノリを展開してもいいのだが、最悪私と母親両方ともゲッチュされて親子丼である。マジで勘弁してもらいたい。


とりあえずこの箱を無視しておやつタイムを強行するのもアリっちゃアリだが……、こんなもの置いてある横でリラックスなどできるはずもなし。




「さわって……、みるか……。」




どうせこれを触らずにできることなんてそうそうない。自分が安全と思っていた家に急にミミック的トラップが発生するのであれば、もうこの世界で私の貞操を守ることは不可能である。急に箱が現れるのだ、不思議な力、もしくはゲーム的進行の元で強制スチル開放イベントが私の身に巻き起こるのは避けられないのだろう。



半ばあきらめと共に箱の確認をしてみる。



考慮していた最悪のパターン。近づいた瞬間に喰われる、もしくは性的に頂かれることはなく、箱側に変化はない。恐れながら触ってみるがこちらも反応なし。一瞬『ただの箱では?』という考えが頭を過ったが楽観的思考は却下、開けたら発動するタイプのトラップと判断。


見た感じ基礎となる材質は木、こういった小物や装飾などの知識は前世も今世も持ち合わせていないのでよく解らないが値段を付けるとしたら高め、そしてなにか伝統的な手法が取られているようには思わない。少しは箱自体を押して移動できるかどうか試してみる。……中身が何なのか解らないが移動させることは可能、だが重くて持ち上げることはできなそうだ。



「よっしゃ、開けるか! 女は度胸!」



もうヤケになりながら思いっきり開ける。すると中から生理的に無理なドギツイピンク色の触手が息良い良く私を包み込む……、なんてことはなく一枚の紙きれが置かれていた。



「おぅ……、何か怪奇現象的トラップでもレンタルビデオ店で暖簾の先にある秘境的トラップでもないのね……、いや安心したわ……。と、とりあえず何かいているか見てみるか。」





『ぱっぱかぱ~ん! イスズちゃん転生おめでとうございま~す! なんか知り合いから聞いてみたけどこういう転生ものにはチートがつきものなんだって? なんかよく解らんから適当に目についたの入れておいたらから確認してヨロシ。簡単な説明書も付けといたから見といてね! ではバイび~!』




”全く持って意味不明だぜ☆”という幻聴が聞こえるぐらいの内容を読み終わると『PON☆』という子気味いい音と主に消えるメモ。んで視点を元に戻すと箱の中に分厚めの取扱説明書。……なんですかね、これ?




「考えうるに、知らうち前世の私が死亡。そこに目をつけた神様っぽい高位存在が私を転生させた感じ? 放り込んだのはエロゲ世界で昨今のなろう・カクヨム情勢を考えうるに転生にチートはつきもの。でも何がいいかよく解らんから適当に目が付くもの用意しといたという感じかな?」



「……まぁ自身が攻略者側な18禁ゲームにブチこまれたのは許せないが、チートくれるのだったらもらっときましょうか。とりあえずこの説明書読んでみるとしますかね。」





んじゃ、この分厚い説明書読むのでお時間いただきますぜ。洗濯機とか冷蔵庫とかの家電の説明書は読む気にならないけど、なんかチートの説明書とかなると苦にならないよね。たぶんゲームの説明書とか攻略本読むのが全く苦にならないとかそういう感じ? 結構ワクワクしている自分がいるんですよねぇ、だってチートですぜ!? あ、早く読め? すみませぬ……














あ~、なるほど、うん。


どうしよ? “この勝負、私の勝利だ!”みたいな感じで勝利宣言した方がいいんですかね? なんだかゲームの序盤でチートMOD入れまくったせいでストーリー崩壊した感じになってしまうぞこれ? いや私的には攻略されなくなるからストーリー崩壊はありがたいんだけど……、なんだか申し訳なさがね。


と、とりあえず簡単にまとめてみたので見てくださいな、全部で10個です。多すぎるんですよねぇ……。


結構量多いので読み飛ばしてもらっても大丈夫な奴ですんで。それではどうぞ。





〇一つ目! なんかめっちゃ強そうな槍!


見た目は木だけど金属よりも固そうな柄、三つに分かれた刃先もある感じ。これ突くのも切るのも出来そうな感じですね。あと刃先の反対側、石突だっけ? そこも金属でできたものがくっついている。全体的に神秘的な装飾してあって強そうですなぁ……。


あと特殊能力として100本まで分裂するのと投げたら敵にあたるまでホーミングするんだって。チートかな? チートだったわ。あとなんか神格持ちに特攻もあるみたいです。



〇二つ目! なんかヤバそうな日本刀!


鞘とか持ち手のところは普通なんですけど、これ刃が真っ赤なんですよ……。なんか血に狂った敵キャラとか持っていそうな日本刀。まぁ切れ味の方はすごくて試しにおやつとして持ってきていたショートケーキに刃を当ててみたんだけど、力入れてないのに載せていたお皿まで切れちゃった。……どうしようこれ?


特殊能力としてなんか人を切ると切れ味がどんどん上がっていくらしいです、それも永続バフで。やっぱこれ人切りの剣客とか持っていたやつですよ……。呪われそうなのでしまっときましょ。しまっちゃおうねぇ~!



〇三つ目! 腕のサポーターみたいなやつ!


なんだろ? 腕甲って言うんかな? 腕にだけ装着する鎧みたいな感じ。意匠はスマートな感じで腕の外側と肘を重点的に守る感じで手のひら全体は指だしグローブみたいですな。色はキレイな水色で統一されていましてさっきの刀と比べると目にやさしくてヨシ!


それとこれ装着している間、無手の武術関連の知識がインストールされて達人級の武術が使えるようになるみたい。ちょっと着けて演武とかしてみたけど、まぁ面白いように体が動く動く。楽しくなってやり過ぎちゃったから汗だらだらですわ。身体能力とかは上げてくれない感じですね。



〇四つ目! ネックレス、地味に一番うれしい奴!


はい、チート。って感じのネックレス。着けている間は身体能力が大幅に上がって、なんか状態異常とかの完全耐性が手に入るみたいです。うん、私が一番求めていたやつですよね、状態異常無効。


基本的にエロゲで無理やりされるの睡眠薬とか媚薬とかそんなんですから、状態胃所の対策はマジでうれしい。それに身体能力上がれば比較的平和に障害を排除できるじゃん? 二つ目の刀みたいに物騒じゃないじゃん? それに首から掛けるだけだから目立たない! 最良! デザインは見たことのない女神様が四人並んでいる感じですね。これなんの意匠ですじゃろ?



〇五つ目! 真っ赤なマフラー! というかスカーフ?


なんか忍者狩るために忍者絶対殺すマンになった奴みたいのスカーフ? マフラー? まぁ言ってしまえば長めの赤い布。横幅も結構大きくて首がスポッと隠れる感じ。首に装備すると伸縮自在になるみたいでビルのでっぱりとかに巻き付けてターザンごっこできるみたいです。なんか赤いしNYでやってみたいですね。青色要素は……、腕甲でも付けときますか?


あとこれ着けとくと隠密度が上がるみたいです。隠れるのに補正がかかるって奴かな? ニンジャ! ニンジャナンデ! オタッシャデー! サヨナラ!



〇六つ目! 本!


はい、これが一番ヤバいの。装丁はキレイな皮を張っている高級そうなご本。中身は魔術の本。なんか持っていると中に書かれている魔術全部使えるみたいです。しかもリキャストタイムがあるだけでほぼ使い放題。ファンタジー魔法でよくあるような火とか水とか雷出すようなものは当たり前、回復魔法とかバフかけるのとかまぁ色々取り揃えております。


正直これ一冊でチート他いらなかったんじゃね? というぐらいです。……これ後々強すぎて修正されるんちゃうかな? なんか色々もらってしまったし、ウチとしては構いませんけど……。



〇七つ目! くっそ重い盾!


何だろ、タワーシールドって言うのかな? 私の背丈ぐらいあって盾の厚さも5cm以上ある感じ。四つ目の身体能力あげてくれるネックレスがないと持てない感じだね。あ、あとなんか部屋がみしみしとその重量を主張しているから部屋の中で使うの禁止と言うことで……。さすがに床抜けるのは勘弁なので。


デザインは聖騎士とかが使いそうな感じで全体的に銀色。防具としての能力はとっても硬くて後ろにいる人絶対守りますよ! って感じらしい。これ私使うタイミングあるかな? 守る相手……、家族と友人ぐらい?



〇八つ目! これは鎧なんですかねぇ?


説明書見た感じ鎧、みたいな感じなんですけど取り出してみたらなんかスライムみたいな黒い物体が出てきました。何でも自分の思う形に形状変化する鎧らしいですね。んで、待機状態が黒スライムだそうです。


防御力はマシンガンの弾丸に耐えられるくらいの控えめ! って書いているんですけど十分ですからね! あと比較的スペース取らないし、背中に隠しておくこともできそうなのでこれ便利っすね。



〇九つ目! 意味不明☆ 鍬!


はい、謎~! 何でもこの鍬で耕した大地は農作物が多く収穫出来て、んでもって成長も速くなるらしい。いやまぁそれはいいんですけど……、え、何? 私今から農業しろと? ファーミングのお時間でしたのか!?


普通に使い道とかあるし、土地の栄養素が枯渇しているような土地だとこれ神チートなのでしょうけど……、現代日本人にはいらなそうですよね……。



〇最後! 十個目に箱!


説明書を中から取り出したら底が見えない真っ黒な空間が出現した箱! 最後になったけど今まで取り出したチート道具君たちはこの箱に収まっていたんですよ。なんでも自分の寝室に出現する箱みたいでチート道具含め何でも無限に収納することができる箱みたい。設置型アイテムボックスですな。あと箱の中身の重さは反映されないみたいなので床が抜ける心配なし!






ま、こんな感じですかね? 今挙げた内容以外にもまだまだ各チートごとに細かな設定があるみたいですけど今はそこまで緊急性がないため後回し。まとめると近接武器二つに防具四種、アクセサリーと魔法本一つに農具と箱。全部私しか使えないタイプの道具たち。使い道が今のところ無さそうな農具がありますけど大盤振舞なチート道具たちですね……。




「う~ん。どうしたもんかなぁ?」




問題の箱の上に腰掛けながら、チート刀の切れ味の実験で真っ二つになったケーキを口に運ぶ私。


もちろん実験のせいで上弦と下弦の月になってしまったお皿のこともあるが、このチート群の使い道についても悩むところである。今現在私が侵されている危機は貞操の危機であって、生命の危機ではない。明らかに過剰戦力であるこれらが用意されてってことは今いる世界のストーリー進行的にこの戦力を使う必要性のあるイベントが発生するか、このチートをくれた高位存在が脳死で適当に放り込んだかのどちらか。



「まぁ、考えとくべきなのは前者だろうね。後者の方だったとしても『考えすぎでした!』ってだけで心の準備をするのはいいことなはず。」



ま、とりあえずお皿割ってしまったことママ上に謝るか。




「ごめん母さん~! お皿割っちゃったぁ~!」







 ーーーーーーーーー






「さて、父さんも母さんも寝ましたかねぇ?」




時間は深夜。窓を開けて外の風を部屋に送り込みながら空に浮かぶ月を見上げる。




「ではでは! 第一回チート性能試験! 始めていきましょうか!」



今回の目標はその名の通り放課後に手に入れることになったチートを使ってみること! あと例のラブラブカップルのせいで持ち帰ることのできなかった宿題を持ち帰ることが目標でっす。


持って行くのは一つ目の槍、三つ目の腕甲、四つ目のネックレス、五つ目のマフラー、六つ目の本、八つ目の鎧となっております! 人切り刀であんまり使いたくない二つ目と重くて持って行きたくない七つ目の盾はお留守番ですね。……え? 鍬? 持っていく訳ないじゃん。



本と槍は護身用に一応。それ以外は大体自分の能力を上げるか防御に役立つ感じで纏めてみました。ペンダントで強化された身体能力がどれほどなのかを学校までの移動でパルクールすることで確認。後はマフラーでジャンプの飛距離とか伸ばす感じでいこうと思います。


それと個人的に見てほしいのは私の意思で形状変化してくる鎧こと黒スライム君。形だけじゃなく色も変えられるみたいなので頑張って夜に紛れる暗色を基調とした未来的ニンジャスーツみたいなのしてみました! いや~、厨二心が擽られますな! 真っ赤なマフラーと淡い感じの水色腕甲がアクセントになっていい味出していて……、くふ! 変な笑い声出ちゃう!


う~ん、にしても美人に転生しましたなぁ……、体のラインがハッキリでるタイプの衣装に変化させてみましたけどいい感じじゃないですか。普通ならこういう凹凸がハッキリわかる服? は恥ずかしいのかもしれないけど私中身男ですし、自身がこれを纏っているというより他人が着ているのを拝謁させてもらっている感じなんだよね。ん? でもこの腰のあたりとか胸のあたりとかもう少し盛ってもいいかもしれん……、お? スライム君が妾の意思に合わせてサイズ持ってくれましたね。これで完璧ですタイ!



あ、言い忘れていたけど身バレ防止のために魔法使い放題(リキャストタイムあり)の本で髪色を灰色にしていつもは絶対にしないポニーテールにしています。ツインテール教エロゲ世界支部司教の私が神敵であるポニーテールの髪型にしてしまうのは非常に心苦しいが、身バレ怖いもんね。


こんなエッチなスーツ着て深夜徘徊しているとバレたら明日から学校いけませんで、変装大事どすな。




「えっと確か…【マジック・カラーチェンジ髪色・グレー】って魔法だったかな? にしても英語詠唱とは思わなんだ。こういうのって異世界言語で読み上げないといけないかと思ってたんだけどなぁ……。ま、やりやすくていいんだけどね! じゃ、そろそろ出発しますか!」



身体強化のおかげか異様に軽い体で軽く飛び跳ねる。全身の調子を簡単に確認し、そのまま開いている窓に向かってダッシュ。窓枠上部を支店にして空へ飛びあがり、そのまま屋根へ。



「うわ、すっご! 思った通りの動きできるじゃん!」



前世では簡単な運動、まぁ空手をやっていたわけだけど自分の思う浮かべる動きをそのまま現実に反映できたことは一度もなかった。身体強化してくれるネックレスのおかげか、はたまた武術インストールしてくれる腕甲のおかげかは解らないけどこれは気分がいいものですな。その動きがアニメなどでしか見られない現実と乖離したものだとなおさらです。


出来るだけ音を立てないように着地。まぁ普段見ないし掃除の使用がないから仕方ないかもしれませんけどウチの屋根結構汚れていますね……。ま、脚先までニンジャスーツは纏わせてるんで我がおみ足が汚れる心配はないんですけど。



「さて、宿題を取りに行くとしますかね……、うん? そういえば取りに行くとしてもいつ宿題するんだ? ……徹夜かな?」





宿題を忘れたせいで徹夜確定というなんだか情けない灰の忍者は闇に融けて行くのであった。




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