第3話

 数時間後、私たちはまだ解放されず、ソファに座っていました。

 さすがに飲まず食わずというわけにもいかず、皆にそれぞれコーヒーが用意されました。

 しかし、誰も口に付けません。

 本当は飲みたいのに、誰も飲みません。

 まぁ、毒殺があった家で何かを口にする気にはなれないという気持ちはわかります。

 

 しかし、このコーヒーはわざわざ新しく買ってきて、憲兵が立ち合っている状態で淹れたので、毒は入っていません。

 入っていないはずです……。

 入っていないといいですねぇ……。


 やれやれ、しかたがありませんね。

 誰も我先にと飲む人はいないので、私が飲むことにしましょう。

 私も飲みたいのが本音ですし。

 私はコーヒーカップを持ちました。

 においは、特に異常ありませんね。

 淹れたてのコーヒーのいい匂いがします。

 見た目も、まぁ、普通のコーヒーですね。

 といっても、見た目で毒が入っているかなんてわからないのですけど……。


「いただきます」


 私はコーヒーを口に入れました。

 皆の注目が集まります。

 いや、あの、そんなに注目されたら飲みずらいのですが……。

 そんなに心配せずとも、皆さんもご自分のコーヒーを飲んでください。


「ふぅ……」


 事件が起きてから何時間も飲まず食わずだったので、コーヒーがいつも以上に美味しく感じました。

 とても落ち着く香りで、リラックスできます。

 あら? 

 なんだか、何か思い出せそうです。

 リラックスしているせいなのか、頭が冴え渡っている気がします。


 えっと、そうです、今まで感じていた違和感の正体です。

 あぁ、やっとわかりました。

 あの時のあの行動、それで違和感を感じたんです。


「あのぉ、憲兵さん、ちょっとよろしいですか?」


「はい、なんでしょうか?」


「私、犯人わかっちゃいました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る