第11話 国内の問題
「よし、”オルタナティブ”とオールドデウスの大きな違いはしっかりと理解したな? そしたら次は国の状況を理解したい。セツナ神国との戦闘の被害、オールドデウスに来て今現在変わったことや発生している問題があれば報告をしてくれ」
国の状況に関しては俺もセツナからざっくりとだけ聞いているけど、こっちに転移? してきてからのことは、まだ城の外には出てないためわからない。
まぁ、セツナ神国との戦争の被害もなんとなく把握してるけど、あくまでなんとなくだし、こういうのはエルナの方が絶対に詳しいと思う。
その他の国の事情も、国を作ったのは俺だけどこれまで実際に住んできたみんなの方が知ってることは多いはずだ。
クレプスクルム帝国には常に何かしらの任務がある近衛騎士団、憲兵団、暗部を除いて第一から第七まで合計七つの軍団があり、それぞれの軍団にはトップの軍団長と複数人の副団長がいる。
軍の最高司令官は皇帝である俺だけど、戦時下の時や個別に命令が無かった場合の軍の裁量や細かい指示については各軍団長に任せている。
だからもう既になにかしら行動を起こしてる者もいるかもしれない。
「とりあえず、まず俺が分かってることは今現在クレプスクルムの国土は首都のみってことだけなんだけど、これについては?」
俺の質問には姫モードのエルナが答えてくれる。
こういう受け答えをするのはいつも主にエルナだ。
国の内政を任せてるだけあってこの中で一番適任なんだろう。
「はい、間違っておりません。実際は帝都とその周辺という感じで、城を中心に半径約五十キロに渡って【常闇の結界】が張られてる状態です。その先は境界線の様に途切れていて普通に青空が広がっているようです。これについてはエルドラドが既に確認し報告を受けています」
なるほど、つまりはその半径約五十キロが現在の俺の領地、ひいては現在のセツナの領域、これを広げて行けばいいわけだ。
ちなみに、エルナが言った【常闇の結界】というのは、その名の通りその結界の効果が及ぶ場所は常に夜の状態が続く効果をもつ。
住人のほとんどが吸血鬼である我が国にはかなり重要なものだ。
城を中心に発動してるのは、実はこの城そのもの魔法陣でありが結界を発動させる魔道具の役目を果たしているからだろう。
‥‥‥この城を建てるのかなり苦労したんだよ。
俺が昔の苦労を思い出している間にもエルナの説明は続いて、エルドラドが報告したという内容になっていく。
「報告によれば帝都以外の街は無く、帝都の外は完全に森に囲まれている状態だそうです。帝都以外にいた住民たちも行方不明で、恐らくは”オルタナティブ”内に残っているものと思われます」
セツナとの戦争では、お互いの首都以外のほとんどの街が崩壊しかけてたもんな。
「セツナとの戦争で受けた帝都の被害と帝都の住民たちの様子はどうなってる?」
「戦争の被害については主に建物の破損などでしたが既に復興済みです。住民たちの様子も、それぞれの軍団が緊急事態であることを宣伝したので、騒動になることは無く災害対策マニュアルに従って冷静に対処しているようです」
「‥‥‥いや、お前らみんな優秀だな‥‥‥住民たちもなかなかにタフネスだし」
「それはもちろん、我らは栄えあるクレプスクルム帝国の吸血鬼ですから、これくらい当たり前です! それに、似たようなことは以前にもおきましたから」
「エルナ様の言う通りだぜ!」
「いつまでもリオン様におんぶに抱っこじゃいられませんものね」
「えぇ! わたくしたちもやればできるのですから!」
「えー、ずっと震えてたアスタロッテちゃんがそれ言うの!?」
どこか誇らしげなみんなを見て、改めて頼りになることを実感する。
それに確かに、今の状況は転移に似てるところがあるから全くの初見ってことじゃ無いな。
首都の転移現象は”オルタナティブ”で極まれに発生する初見殺しイベントの一つだったりする。
ある日突然、首都そのものが全く見知らぬ場所に転移して散々な目にあった。
あの時はかなりの痛手を被って、「何ちゅうイベント発生させるんじゃくそ運営!」とか思ってたけど、今思えばセツナはこれを見越して起こしてたのかな?
「ちなみに、衣食住のほうはどうなってる? 何か問題はありそうか?」
「いえ、住居に関しては転移してきたのは帝都民だけのようですので少なくなることはありません。食料も夜米に生き血、その他にも色々と備蓄はそれなりにあるので今すぐ問題になることは無いでしょう」
「なら、一先ず国内は落ち着いていると見ていいか。けど、先のことを考えれば放置するわけにはいかないな‥‥‥どれくらいもちそう?」
「そうですね‥‥‥住民全員均等に物資を配給したとなると約二年という所だと思います。やはり、第一次産業のほぼすべてを帝都以外で行っていたのが痛手です」
少し考えるそぶりを見せた後、エルナはそう答えた。
今は問題なくても、備蓄はいつまでも有限じゃない。
食えば無くなる、当たり前だ。
昨今のクレプスクルムでは帝都の近代化に伴い、農業や牧畜などは第一次産業専用の都市や郊外の村、または貿易で補っていた。
それがここに来て手痛いしっぺ返しだ。
エルナの予測だと約二年とのことだけど実際はもっと短いと思う。
クレプスクルムは軍事国家だから当然軍人が多いし、帝都ともなると大体の人が軍に所属してる。
当然、厳しい訓練や戦争などで一般人より激しく動くわけだから、いくら吸血鬼で低燃費だとしても食べる量も多い。
実際は半分の一年くらいと思った方がいいな‥‥‥いや、もっと短いかもしれない。
備蓄庫の火災とかトラブルにならないとも限らないわけだから。
「幸い、周囲の森には普通に動物や魔物がいるので養殖ができるかもしれません」
「それでも、結果が出るのは数年後だろうからなぁ‥‥‥うーん、こうなったら久しぶりにやるか、土いじり!」
「いいですね! 軍主体でやればすぐに開発できると思います!」
「それじゃあ‥‥‥第一軍団長フロガと第三軍団長カイ、及び第一軍団、第三軍団に命じる。第四軍団と協力してうまい米を作ってくれ!」
「——はっ! 久しぶりに腕が鳴るぜ!」
「御意に」
少し考えて、このことに関してはこの二人に任せることにした。
理由としては、フロガが精霊だからだ。
精霊は土地に加護と祝福を与えて、その場所を豊かにできる。
フロガが軍団長だからか第一軍団には種族が精霊の人が多いし、何より最も人数が多い軍団でもあるため、単純に人海戦術に強い。
そして意外や意外、フロガはとても凶暴そうな性格なのに根っからの農業ボーイである。
新種の作物など実験するために軍もいくつか畑を所持してたんだけど、その管理はフロガに一任されていて、毎日熱心に水やりとかをやってるのを知ってる。
もう一人、カイにも頼んだのは、報告に森に囲まれているってあったから。
つまりは畑を耕すためにその森の木を切り倒さないといけない。
カイ率いる第三軍団は、巨人族や
最後に、ここにいないアルディリア率いる第四軍団だけど、この軍団だけは戦闘が専門ではない。
第四軍団の主な任務は武器の修復や新兵器の新魔法の開発、軍で使うアイテムの制作など生産・研究を担当する。
そこには作物の品種改良も含まれるため、彼女たちに任せればこの地に最適な食物の研究を行ってくれるはずだ。
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『帰り道に倒れていた吸血鬼を助けたら懐かれました。』
異世界からやってきた吸血鬼少女が一人暮らし大学生と一緒に過ごす居候ラブ?コメです!
吸血鬼の少女であるシアが助けてもらった恩とお触れる想いを胸に精一杯主人公に尽くします!
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