第8話 ここにいない仲間と謝罪

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 さぁて、じゃあさっそく土下座でも! って思ったものの、その前に。


「えっと、エルナ。何席か空席があるんだけど‥‥‥」


 そう、よく見れば埋まってる席は俺を含めて十席、三席分いない人がいる。


 まさか謝る余地もなく見切り捨てられてっ‥‥‥なんて思い始めて凹みそうになってると、エルナがちょっと怒った風に。


「アルディリア、やっぱり私の話聞いて無かったのね。お兄さまが呼んでるから来るようにって言ったのに!」


「カグヤは我が声をかけたのですが‥‥‥もう一度呼んできましょうか?」


 と、今度は反対から不満そうなヴォルクがそう言って静かに立ち上がろうとするのを手をあげて止める。


 真面目くんのヴォルクのことだから、俺の招集に集まらなかったのにちょっといらだってるんだろう。


 だけど二人から聞いた名前で、別にさっき自分が危惧したような見捨てられたってわけじゃないと思ったから、そこまで目くじら立てる必要はない。


 いない二人の性格を考えれば、たぶん新天地に来たことで好奇心に夢中になって話を聞いて無かったのと、寝ぼけててよく聞こえなかったんだろう。


 それなら別に今すぐ呼ばなくても、後で俺から出向けばいい話だ。


 だけど、もう一人はそんな不真面目じゃないはずなんだけど‥‥‥。


「二人のことはいいよ。それよりも、ダームエルは‥‥‥」


 薄々なんでここにいないか予想できてるものの、確認せずにはいられない。


 俺の問いに、一瞬だけ会議室の空気が沈んだ。


「お兄さま、ダームエルはあの時が最後でした。私たちがオールドデウスにやってきた時には、もう‥‥‥」


 部屋の空気とエルナの言葉で、俺の予想がやっぱり当たっていたことを裏付ける。


 孤高の十二傑が一人、≪縹騎血キュアノス≫ダームエル。


 彼の種族は暗黒騎士ヴァンパイア×吸血鬼ダークナイトで、剣の腕もさることながら、≪孤高の十二傑≫の中で騎乗戦が最も強く、【呪術】が得意なキャラだった。


 その温厚な性格もあって、帝国でもたくさんの人たちに信頼を受けていたことから、国の治安維持を担当する憲兵団の団長も務めていたのだけど。


 セツナとの戦争で、相手の主力部隊で軸となっていたのは聖騎士団だった。


 聖騎士団は聖なる秘術と剣技を使ってくる吸血鬼の天敵みたいな存在だ。


 それに真っ向から対立できたのは、主に暗黒騎士団が主体となってるダームエルの部隊で、俺はもちろんセツナの聖騎士団の猛威を抑えるためにいの一番に彼らをぶつけた。


 結果、ダームエルは敵の聖騎士団長と激しい戦闘の末、相打ち。


 それが俺が見たダームエルの最後だった。


「‥‥‥そっか、蘇生は間に合わなかったか」


「はい。というより、そもそも蘇生のアイテムのどれも既に使い切ってしまった後でした」


 エルナの言葉に悔しさが滲んでくる。


 もっとできることがあったのではないか、準備をこれくらいでいいかと高をくくっておろそかにしていたんじゃないか‥‥‥そんな、今更どうしようもない後悔。


 頭では分かっていても、知らぬうちに強く噛んでいた唇から血の味がする。


 それも吸血鬼の種族特性【自然回復】ですぐに治ってしまうけれど。


「ダームエルを派遣させる案を考えたのは私です。だから、お兄さまのせいではありません‥‥‥私の落ち度です」


 俺を気遣うように、そして俺以上に悲観に暮れているエルナの声。


 その声を聞いてハッとなる。


 別に俺はエルナを責めている訳じゃないんだ。


 というより、それこそ最終的にエルナの案を許可をした俺が責任を取るべきで‥‥‥。


 だけど、そんな押し問答はここでする必要はない。


 それにだ、どうにかならないか色々考えてみたけれど、もしかしたら本当にどうにかできるかもしれない。


 例えばそう、ダームエルの鎧は回収してあったはずだから、その聖遺物——ことごとく聖とは正反対の種族だったけど、”オルタナティブ”でキャラの遺骸のアイテムはそう名称される——を使って”魂魄召喚”、それか”輪廻転生”をすればあるいは。


 でも、ここは”オルタナティブ”じゃなくてオールドデウスだから、もしかしたらダームエルの魂は既にない‥‥‥?


 それならもう、女神で”オルタナティブ”の創造者であるセツナに頼めば、もしかしたらできるんじゃないか?


 ‥‥‥うん、やっぱりまだ何とかなる気がする。


 そう思った俺は悲し気に表情を曇らすみんなを見渡して、特に今にも泣きそうなエルナを慰めるように頭を撫でながら声を出す。


「ダームエルのことは俺に任せてほしい。もしかしたらどうにかできるかもしれない。だからエルナもそんなに気にしなくていい」


 俺の声を聞いて≪孤高の十二傑≫たちが顔を上げる。みんなの表情から見えるのは驚愕、関心、尊敬とかそんなものだろうか。


 みんなまだ、俺のことをちゃんと信頼してくれてたみたい。


「その間のダームエルの穴はヴォルクに任せる」


「——はっ! お任せください!」


「頼んだよ。‥‥‥‥‥‥ふぅ、それじゃあ——」


 頼もしいヴォルクの返事を聞いて頷いた後、俺は改めて気持ちを切り替えるように立ち上がる。


 それから、今だけは皇帝の地位とか、メンツとかを一切忘れて、全員に向かって深々と頭を下げた。


「——みんな、今まで騙すようなことをしていてごめん! 一緒に戦ってると嘯くようなことをしてて本当に悪かった! これからは正真正目、同じ世界で、同じ場所にいる仲間だから! だから、どうかこれからも俺についてきてくれ、ない‥‥‥か? え、なんでみんなそんなポカンとしてるの?」


 俺の心の底からの誠心誠意の謝罪に、みんなはすっごいあっけにとられたような表情をするのだった。




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『帰り道に倒れていた吸血鬼を助けたら懐かれました』

https://kakuyomu.jp/works/16816700428194914635

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