第4話「金のわらじを履いても探せ」
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一時間ほど泣いたので少し気持ちが落ち着きました。
「お母様、お祖母様、どうしましょう!? 私十八歳になるのに婚約者がいないわ、おまけに卒業パーティーで公衆の面前で婚約破棄された傷物令嬢になってしまいました! このままではお嫁に行けず弟に迷惑をかけてしまうわ!」
このままだと、弟と弟の婚約者に小言を言う行き遅れの小姑になってしまうわ。
「新しい婚約者を探そうにも、優秀な後継ぎの方はすでに結婚しているか婚約者がおりますし、残っているのは博打が好きか、暴力を振るうか、無類の女好きか……とにかく同年代にまともな人は残っておりませんわ」
私が公爵家の跡取りなら貴族の家の次男か三男で優秀な方をお婿に出来たかもしれませんが、公爵家は弟が継ぎますから私はお嫁に行かなくてはなりません、婚約者探しが難航するのは必至ですわ。
お母様とお祖母様が顔を見合わせ、にんまりとほほ笑んだ。
「同年代の婚約者が無理なら年下の男子を狙えばいいのよ」
「私の母、お前のひいお祖母様も婚約者に誕生日パーティーで婚約破棄されたあと、年下の男子とお見合いして結婚したんだよ」
「えっ? でも嫡男で婚約者がいない男子となると十二~十三歳ぐらいですわよ」
十八歳の私とは年が離れすぎていますわ。
「大丈夫よ、昔から『年上の女房は金のわらじを履いてでも探せ』って言うじゃない?」
「お母様、わらじってなんですの?」
「東方の国の履物さ」
私の問いにはお祖母様が答えた。
「つまり、年上のお嫁さんは金の靴を履いてでも探せってことよ」
「レイチェルは器量が良くて学園の成績も優秀、礼儀作法は完璧、領地経営についても学んでる、引く手あまたね」
お母様とお祖母様はうきうきしながら「釣書が何枚届くかしら?」と言って部屋を出ていった。
果たしてそんなに上手くいくでしょうか?
卒業パーティーで婚約破棄された傷物令嬢と結婚したいと考える年下の令息が一人でもいてくださればよいのですが。
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