3章

迷宮へ(3ー1)


「迷宮都市ルナの迷宮入口施設へようこそ!」


 首まで伸びる金色の髪に、青空を連想させる水色の瞳。

 そして僕みたいな、エルフ特徴の尖った長い耳。

 迷宮入口、という名の施設に入ると、エルフの受付嬢が話しかけてくる。

 彼女を一言で表せばじゃ、日本語におけるごく普通の単語である「可愛い」が1番ふさわしいだろうと僕は個人的に思う。

 もう、この世界には異性の中で美少女しか存在しないということを思わせるぐらい森を出てから美少女にしか会っていないのだが。

 そしてそれも隣に立っている猫耳少女も例外ではない。

 

 腰まで伸びる紫色の長い髪が印象的であろう猫耳少女であるセナだって超美少女で、その髪と同色の瞳が魂を見抜きそうな鋭さを持っている。

 無邪気であるその性格でも更にその可愛さを増しているのは言うまでもない。

 もう犯罪だ、この世界は。

 100歳を超えているとはいうものの、まだ思春期中だよ、僕は。

 けれど我慢することしかできない。

 我慢したらすべてが解決される。

 そう、我慢したらな。


 ということで、集中集中。

 冷静を取り戻すために深呼吸をすると、やっとある程度まで冷静を取り戻して、集中することができた。

 僕は受付嬢に話しかける。


「あぁ、えっとですね、迷宮に入りたいんですが、いいんですか」

 すると受付嬢は眩しい笑顔を見せながら、


「はい、いいんですが、冒険者カードをお持ちですか?」


 冒険者カードはさっき【冒険者ギルド】の受付嬢にもらったんで持っているのだが、みんなの前で【アイテムボックス】から召喚したほうが決していい選択なのかな。

 そんなことが知らなくて冒険者ギルドの受付嬢が背を向けた瞬間でこっそり【アイテムボックス】を召喚してその中に入れたが、今となっては別に誰が見ても構わないということを思い始めた。

 それに、冒険者カードを提示しなければそもそも迷宮に入れさせない気がするので、しかたなく【アイテムボックス】から冒険者カードを取り出す。


「はい。こちら、僕の冒険者ギルドのカードです」


 そう言って受付嬢に見せる。

 すると【アイテムボックス】から冒険者カードを召喚したら一瞬にして驚愕しているような表情を浮かべるセナと受付嬢だが、その次の瞬間で冷静を取り戻したか、普通に僕が差し出したカードを手に取って見た。

 するとしばらく見ていたら返した。


「かしこまりました。マティアスさんはFランクの冒険者なので、1階層での狩りしか許可されないのですが、いいんですか?」


「はぁ?Fランク」


 と、驚くセナだが、無視することにした。


「構いませんよ」


 言うと、受付嬢が頷く。


「かしこまりました。あとはそうですね……こちら、転移結晶というものです」


 言って受付嬢はカウンターの上にあるいくつかの結晶を指さす。


「危険なときにこれを使えば、迷宮の出入口まで自動的に転移させます。ぜひ、お受け取りくださいませ」


 する受付嬢の言われるがままに僕は転移結晶を1個拾ってポケットに入れる。


「どんな雑貨屋にでも購入することが可能ですのでぜひ、お買いください。そちらのお嬢さんも、もし迷宮に入るのならば冒険者カードのご提供をお願いします」


 信じられないと言わんばかりの表情を浮かべながらまだ僕を見つめているセナに声をかけると、セナははっと我に返って「はい!」と、言いながら慌ててスカートのポケットの中に手を入れ、その中から財布みたいなものを取り出す。

 すると財布みたいなものを開けて、受付嬢に見せる。


 見せたのは、その中にある冒険者カードだ。


「Cランクの冒険者ですか。でしたら3階層まで降りても大丈夫でしょ。これもお受け取りください」


 言って、セナに転移結晶を渡す。すると転移結晶を受け取り、セナはまた財布みたいなものをスカートのポケットに戻して、続いて転移結晶をもう片ポケットに入れる。


 見て、受付嬢は微笑みかける。


「準備ができましたみたいなので、今から迷宮に転移させます。あそこにある転移魔法陣に移動してください」


 言って、施設の真ん中にある魔法陣を指差す。

 僕とセナは言葉を交わさずに言われるがままに魔法陣のあるところまで移動して、その上を立てる。

 すると受付嬢は、


「それでは、お気をつけおかえりなさい」


 そう言うと同時に、室内は一瞬にして眩しい光に包まれる。

 そして次の瞬間、目を開けたらそっちは、もはや迷宮入口の施設じゃなくて迷宮の中だった。

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異世界転生エルフ、世界最強を目指す。 鏡つかさ @KagamiTsukasa

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